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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術51巻6号

2023年06月発行

雑誌目次

技術講座 血液

血小板凝集能検査の基礎と臨床

著者: 國島伸治

ページ範囲:P.608 - P.612

Point

●血小板凝集能検査は多血小板血漿(PRP)に血小板凝集惹起剤を添加し,血小板が凝集する過程を評価します.

●採血,検体調整,測定手技には細心の注意を払います.異常値をみた場合には再検査を考慮します.

●ベルナール・スーリエ(Bernard-Soulier)症候群ではリストセチン凝集を欠如し,血小板無力症ではリストセチン以外の凝集を欠如します.

生理

呼吸機能検査:2021年刊行ハンドブックに基づいて

著者: 山本雅史

ページ範囲:P.614 - P.619

Point

●スパイロメトリーの適応と相対的禁忌が記載され,どのような目的で検査がされるか,また検査の際に注意すべき疾患が示されました.

●肺活量(VC)の再現性の基準が「最大VCと2番目に大きいVCの差が0.15L以下および最大VCの10%以下」へと変わりました.

●努力肺活量(FVC)の妥当性の基準(外挿気量)が「0.10LあるいはFVCの5%のいずれか大きい値より少ない」へと変わりました.

●努力肺活量の再現性の基準が「最大のFVC(FEV1)と2番目に大きいFVC(FEV1)の差が0.15L以下」へと変わりました.

下肢静脈瘤における超音波検査のポイント

著者: 秋山忍

ページ範囲:P.620 - P.628

Point

●下肢静脈瘤の診断にかかわる解剖,分類を覚えましょう.特にCEAP分類の臨床分類は,手術適応を決める材料となりますので大切です.

●検査体位,高さを工夫するなどし,患者・検者ともに負担の少ない検査を心掛けます.標準的評価法をもとに,短時間で評価していくことが必要です.

●表在静脈の検査においては,プローブの重さも血管圧迫の原因となります.検査時はエコーゼリーを多めに使い,血管をつぶさないように検査します.

●レポート記載は,検査所見と,そこに対応する画像が必要になります.逆流の始点・終点や,穿通枝逆流など,ポイントとなる画像をしっかり残しましょう.

トピックス

梅毒治療薬—ベンジルペニシリンベンザチンの再興

著者: 内田裕之

ページ範囲:P.630 - P.632

はじめに

 今般,梅毒の治療薬として世界標準である持続性ペニシリン製剤が,わが国においても利用可能となったことを契機として本稿で取り上げる.

クロウ・深瀬(POEMS)症候群とVEGF

著者: 橋口照人

ページ範囲:P.634 - P.636

はじめに

 クロウ・深瀬(POEMS)症候群は診断の初期より血清VEGF濃度の著しく上昇する症候群である1).わが国における発生頻度は10万人当たり0.3人とされる2).多発神経炎,浮腫,肝脾腫などの臓器腫大,内分泌異常,色素沈着,剛毛,血管腫などの皮膚症状を主徴とする特異な症候群であり骨病変およびMタンパクを伴うことが多い.本症候群の特異的な臨床症状のなかで浮腫は初発症状として多発神経炎に次いで最も頻度が高い.この浮腫は時に胸水,腹水などを伴う全身性浮腫でありsystemic capillary leak syndromeとして血管透過性因子の存在が想定されていた.本症候群においては特徴的症候の他に持続的凝固亢進状態の存在が知られ,虚血性微小血管障害あるいは急性動脈閉塞を高率に合併する3)

 本症候群においては同一患者の血清VEGFが血漿VEGFに比べ著しく高値であり,異常高値を示す血清VEGFは主に血小板由来である.VEGFは骨髄あるいはリンパ節にて増殖した異常な形質細胞により産生されると推測されるが血小板に蓄積される機序は明らかではない.血小板の血管内皮細胞上への粘着凝集により放出されたVEGFの局所濃度は著しく高まり,その生理活性(血管透過性亢進作用,血管新生作用)を過剰発現させると推測される4).本症候群は指定難病16に指定5)されている.

FOCUS

薬剤性間質性肺疾患—分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬における作用機序

著者: 野口陽一朗 ,   近藤康博

ページ範囲:P.638 - P.640

がん治療における分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬

 がん治療において,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬が近年広く使用されるようになっている.従来の抗がん薬はいわゆる殺細胞性抗がん薬と呼ばれるもので,がん細胞だけを特異的に攻撃するという薬剤ではなく,全身に障害を与えるものであった.このため,従来の抗がん薬の副作用は一般的に強く,患者の負担は大きかった.そこで,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が注目されるようになった.

 がん治療における分子標的薬とは,がん細胞のもつ特異的なタンパクなどの分子だけを標的として攻撃するように作られた薬剤である.悪性リンパ腫ではCD20,肺癌では上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)などというように,特異的な分子だけを狙って攻撃することができる薬剤が実際に使用されている.がんの細胞に特異的な分子を狙っているので,ヒトの体の正常な部分には作用が少ないとされていて,従来の抗がん薬よりも患者の受ける負担が小さいというのがその特徴である.

臨床検査技師による病棟採血の取り組み

著者: 辻友紀

ページ範囲:P.642 - P.644

はじめに

 近年,タスクシフトの取り組みにより臨床検査技師の業務拡大が進行中である.

 本稿では,臨床検査技師が病棟採血を行うことの有用性,富家病院(以下,当院)での取り組みについて紹介する.

病気のはなし

食中毒

著者: 小西典子 ,   甲斐明美

ページ範囲:P.646 - P.657

Point

●2001年以前には腸炎ビブリオやサルモネラ属菌による食中毒が多発したが,最近ではこれらの食中毒は激減した.一方,2004年以降ではノロウイルスやカンピロバクターによる食中毒が主体を占めている.患者数ではノロウイルスによる食中毒が最も多い状況は続いている.

●2018年以降には寄生虫(アニサキス)食中毒が最も多い.これは2012年にアニサキスが食中毒の病因物質に追加されたことを契機に,報告体制が整ってきたことが大きく関係している.

●食中毒の主な原因食品は,サルモネラ食中毒では鶏卵から鶏肉が主体に移り,腸管出血性大腸菌(EHEC)食中毒では牛肉およびその内臓肉のみならず,野菜やその加工品が原因となった事例も発生している.

●最近,astA遺伝子保有大腸菌による集団下痢症が発生し,注目されている.

疾患と検査値の推移

脂肪肝(NASH,NAFLDを含む)—診断法および検査値と画像所見の推移

著者: 和久井紀貴 ,   松井哲平 ,   永井英成

ページ範囲:P.658 - P.663

Point

●脂肪肝の診断は主に超音波検査で行われており,Bモード法と併せ,脂肪減衰イメージングが活用されている.

●脂肪肝のなかでも飲酒を伴わないNAFLDのうち,線維化が進行し肝硬変や肝癌のリスクがあるNASHが注目されている.

●NASHの治療法は食事・運動による減量や薬物療法である.現在のところ,特に減量が最も効果的な治療法とされている.

過去問deセルフチェック!

血液製剤

ページ範囲:P.613 - P.613

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.629 - P.629

 “血液製剤”とは,ヒトの血液を原料として製造される医薬品の総称です.血液製剤は大別すると“輸血用血液製剤(全血製剤と血液成分製剤)”と“血漿分画製剤”に分類され,血液成分製剤には,赤血球製剤,血小板製剤,血漿製剤があり,血漿分画製剤には,アルブミン製剤,免疫グロブリン製剤,血液凝固因子製剤,アンチトロンビン製剤,組織接着剤などがあります.

 国内でヒトの血液を得るための採血においては,国が定めた採血基準があり,「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律施行規則」に基づき,全血採血(200mL,400mL)および成分採血(血漿,血小板)ごとに,年齢,体重,血圧,血色素量,年間採血量,採血間隔などの基準が定められています.この基準に不適合な場合は,採血できません.

臨床検査のピットフォール

SARS-CoV-2抗原定量検査の注意点

著者: 金貞姫

ページ範囲:P.664 - P.668

はじめに

 SARS-CoV-2抗原検査とは,検体中のSARS-CoV-2抗原をウイルス特異的な抗体を用いて検出する方法である.特に,SARS-CoV-2の4つの主要な構造タンパク質(エンベロープ,メンブレン,スパイク,ヌクレオカプシド)のうち,ヌクレオカプシドをターゲットとするものが一般的である.SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの抗原を同時に検査できるキットも販売され,抗原定量検査の活用場面の幅がさらに広がっている一方で,試薬ごとの検出感度・性能は異なっており,注意が必要である.

 本稿ではSARS-CoV-2抗原定量検査の注意点を紹介したい.

連載 帰ってきた やなさん。・40

ぱぶりっしゅ!!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.669 - P.669

 「Your article is now published !」ときた通知.キタ〜!!( ̄Д ̄)

 がんゲノム検査に関して「得た知見を発表し,世の役に立ちたい」と思い,約1,300症例分のゲノム解析データをまとめることにした.1症例ずつデータを見て,数を数えるものは「1,2,3……」と数えていく超アナログ人間柳田(大学院でAIコースに所属しているとは思えない……).地味な作業……柳田の性格上,作業を途中で止めることができない(本も1冊読み切るまでは止まれない)ため,仕事から帰宅後,朝4時までやることもあった(途中で寝ろ).データをまとめた後は,ゲノムユニットのボスに確認してもらうために提出.しかし,数カ月間音信不通……柳田が「どうでしょう?」と軽くジャブ.すると「ずっと忙しくて〜.確認しますね」とボスから返事……が,数カ月間音信不通……柳田から再度ジャブ……「いやぁ,忙しくて」とボスから返事……音信不通,を何度も繰り返し,「そろそろ柳田さんが暴動を起こす?」とボスが察知するまで黙って待ち続けた結果,数カ月後にダメ出しをされる……そして,また朝4時まで集計……提出する……音信不通……柳田からのジャブ……「ごめん.忙しくて」……黙って待つ……,を何度も繰り返して数年経過した(マジです).同僚歴10年以上の現同僚も「やなさん,すごく辛抱強くなったよね」と,吐息交じりにしみじみ言ってくるくらいだ.まぁ確かに,若かりし頃の柳田であれば即,教授室に怒鳴り込んでいただろうな(よい子はマネしないでね).

Q&A 読者質問箱

脳出血検体に,なぜアミロイド染色が必要なのですか?

著者: 藤田大貴

ページ範囲:P.670 - P.671

Q 脳出血検体に,なぜアミロイド染色が必要なのですか?

A 脳出血の1つである皮質下出血を引き起こす原因には高血圧や外傷など複数ありますが,特に高齢者に多い原因の1つにアミロイドアンギオパチー(アミロイド血管症)が知られています.アミロイドアンギオパチーは加齢とともに増加する傾向にあり,脳血管性認知症やアルツハイマー病を合併していることもしばしばあります.病態としては,大脳の脳表近くを走行する小動脈や中動脈を中心にアミロイドβタンパクが沈着していきます.アミロイドβタンパクの沈着は初期には中膜の平滑筋細胞外に文節状に発生し,進行とともに中膜や外膜に全周性に起こります.アミロイドβタンパクは不溶性なので蓄積してくると,血管の壁が肥厚して血流が悪くなります.このような血管障害が起こると同時に,主に血管の壁がもろくなり破綻することによって出血してしまうことがあります.

ワンポイントアドバイス

ループスアンチコアグラントの臨床的意義と測定時のポイント

著者: 山﨑哲

ページ範囲:P.672 - P.673

はじめに

 ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)は,試験管内でリン脂質依存性凝固反応を阻害する免疫グロブリンであり,固相化抗原を用いた免疫学的測定により検出される抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibody:aCL),抗β2グリコプロテインI抗体(anti-β2-glycoprotein I antibody:aβ2GPI)などとともに,抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid antibody syndrome:APS)の診断に用いられる抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody:aPL)である.活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)や希釈ラッセル蛇毒時間(diluted Russell's viper venom time:dRVVT)などで凝固時間の延長所見を認め,判定には以下の4つの条件を全て満たすことが必要となる.
①リン脂質依存性凝固検査(APTT,dRVVT,カオリン凝固時間など)の延長.
②正常血漿との混合試験で延長した凝固時間が補正されない.
③過剰のリン脂質の添加により凝固時間が補正または短縮する.
④他の凝固異常(凝固因子欠乏や凝固因子インヒビターなど)が除外できる.

 しかし,こうした手順に従って測定することは煩雑であり,検査室にとっては必ずしも容易な検査ではなく,標準化に向けた多くの課題が存在する(表1).本稿では,一連の検査における注意点などについて概説したい.

臨床医からの質問に答える

LAHPSってなんですか?

著者: 森下英理子

ページ範囲:P.674 - P.678

LAHPS

■定義

 ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)陽性者にプロトロンビン〔血液凝固第Ⅱ因子(FⅡ)〕に対する自己抗体が生じ,後天性にFⅡ活性が低下した病態をLA陽性低プロトロンビン血症症候群(lupus anticoagulant-hypoprothrombinemia syndrome:LAHPS)と呼ぶ.LAはリン脂質とリン脂質結合タンパク複合体に対する自己抗体であるが,LAが存在すると抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)のように血栓症や産科合併症のリスクが高まることがよく知られている.一方,LAHPSは1960年にRapaportらによって最初に報告1)されたように,生命を脅かす重度の出血と血栓症の両方を引き起こすという点で大きく異なる.

ラボクイズ

一般検査

著者: 横山千恵

ページ範囲:P.722 - P.722

5月号の解答と解説

著者: 江本美穂

ページ範囲:P.723 - P.723

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目次

ページ範囲:P.606 - P.607

『臨床検査』6月号のお知らせ

ページ範囲:P.605 - P.605

第69回臨床検査技師国家試験 解答と解説

著者: 「検査と技術」編集委員会

ページ範囲:P.680 - P.720

あとがき・次号予告

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.724 - P.724

 侍ジャパンのWBC優勝に興奮冷めやらぬ4月,私の所属する生理機能検査室には4名の新人が入職しました.自分の子どもと同年代の方々が新人であることに,時の流れを感じる今日この頃です.考えてみれば,検査内容も私が仕事を始めた30数年前とはずいぶん様変わりしています.ただ,根源的なものは変わっていないものも多々あります.例えば超音波検査に関しては,30年以上前からBモード断層像は臨床に活用されていました.「検査と技術」の第21巻(30年前)を拝読しても,超音波の記事が比較的多くみられますし,基本的な画像構成はなんら変わっていません.ちなみに,第11巻(40年前)の「検査と技術」もリアルタイム電子スキャン超音波検査の記述がわずかにありました.もちろん,現在の超音波検査において,解像度の進歩と検査適応範囲の拡大は目を見張るものがあります.今回の技術講座では,「下肢静脈瘤における超音波検査のポイント」として秋山 忍先生にご執筆いただいておりますが,私が頸動脈超音波検査を習い始めた30数年前は,静脈瘤の検査を超音波で行うこと自体,通常の検査室では考えられませんでした.しかしながら,「頸動脈以外の血管を超音波で評価できないかな」などと漠然と考えていたのは覚えています.絶えず進歩してきた検査法に思いを馳せると感慨深いものがありますし,自分が携わってこられたことに感謝するばかりです.バックナンバーを読んでいるとついつい時が経つのを忘れてしまいますが,本号を拝読して,温故知新を感じつつ,新しい知識をどんどん吸収するのもよいと思います.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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