Laboratory Practice 〈精度管理〉
compaRison—Rを用いた方法間比較のウェブアプリケーション
著者:
石原裕也
,
藤井亮輔
ページ範囲:P.802 - P.805
はじめに
臨床検査分野(主に検体検査)の日常業務において,試薬や測定機器の変更に伴い,新旧測定法の比較を行う機会は多い.目的に応じて適切な定量的な統計解析が行われるが,まず相関分析(correlation analysis)や回帰分析(regression analysis)が挙げられる.また,新旧測定法の関係式を検討する場合,通常の最小二乗法(ordinary least squares method)が用いられている.しかし,Y軸のみに誤差があると仮定した最小二乗法に対して,最近では,いずれの測定法においても測定誤差があると仮定したDeming法1)やPassing-Bablok(P-B)法2)が用いられる事例も増えている.その他にも,測定法の一致度の検証を行う主な解析方法として,Bland-Altman(B-A)プロット3)が挙げられる.
しかし,Deming法,P-B法,B-Aプロットを実際に行う場合,商用の統計ソフトウエア(有償)や日本臨床化学会(Japan Society of Clinical Chemistry:JSCC)が提供しているファイルが必要になるため,誰でも簡単に使用でき,柔軟かつわかりやすいインターフェースをもつツールは限られている.
本誌49巻7号では,誰でも無料で使用できる統計解析ソフトウエアであるR(https://cran.r-project.org/)を用いて測定法の比較を行う方法が紹介された4).しかし,Rの環境設定やその後の操作は,初心者にとって煩雑でハードルが非常に高い.そこで,筆者らはRを用いた測定法の比較の解析をウェブで簡単に実施できるアプリケーション「compaRison」(以下,本アプリ)を開発し公開した(https://rf-epidemiol.shinyapps.io/compaRison/,ソースコードのリンクhttps://github.com/fujichaaan/compaRison).本アプリの特徴として,①さまざまなデータ形式が読み込める点,②複数の回帰分析を同時に扱える点,③シンプルかつ自由度の高いユーザーインターフェースで実施できる点,④無償で使用できる点が挙げられる.本稿では,本アプリに搭載されているExample dataを用いて,機能や使用方法について詳説する(2023年2月時点).