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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術52巻10号

2024年10月発行

雑誌目次

技術講座 一般・病理

顕微鏡の操作の基本とその原理

著者: 柚木浩良

ページ範囲:P.1004 - P.1010

Point

●顕微鏡の基本構成は対物レンズ,接眼レンズ,照明系(コンデンサ,絞り,光源,フィルタ),鏡筒の4つです.

●顕微鏡の能力を決める要素には「分解能(=開口数)」「倍率」「コントラスト」があります.分かりやすく言い換えるとそれぞれ,見分けられる(分解能),見たい大きさで見える(倍率),見つけられる/はっきり見える(コントラスト)になります.

●顕微鏡の調整は,光軸調整(視野絞りの調整,コンデンサ開口絞り調整),視度調整,眼幅調整,明るさ調整が基本です.

血液

—step up編—凝固波形解析—先天性フィブリノゲン異常症鑑別への臨床応用

著者: 鈴木敦夫

ページ範囲:P.1012 - P.1017

Point

●フィブリノゲン異常症は量的異常と質的異常に区別され,特に質的異常における臨床症状は出血傾向から血栓傾向までさまざまです.

●広く普及しているフィブリノゲン測定法であるClauss法のみではフィブリノゲン異常症を鑑別することは通常できません.

●Clauss-CWA法はClauss法に凝固波形解析を応用した解析法であり,追加コストが不要なフィブリノゲン異常症の新しい鑑別法です.

●Clauss-CWA法は非常に高い精度を持ってフィブリノゲン異常症の鑑別に与することができますが,利用にあたってはいくつかの注意が必要となります.

生化学

生化学汎用自動分析装置におけるコンタミネーション

著者: 枝松清隆

ページ範囲:P.1018 - P.1023

Point

●臨床化学検査におけるコンタミネーションは,特性要因図より検体由来,試薬由来に分類できる.

●検体由来のコンタミネーションは,定期的なメンテナンスが有効である.

●試薬由来のコンタミネーションは,試薬導入時の検討が有効である.

生理 シリーズ 病態生理から読み解く腹部エコー検査・6 各論

膵臓疾患を読み解く腹部エコー検査のポイント

著者: 関根智紀 ,   林涼子 ,   木内清恵 ,   志村謙次

ページ範囲:P.1024 - P.1029

Point

●膵の腹部エコー検査をするには,内分泌機能と外分泌機能を理解することが必要です.

●膵癌の発生を高める危険因子を理解して腹部エコー検査を進めます.

●小さな膵病変の判読には,まず低エコー域の変化を探し出し,次に病態生理から読み解きます.

トピックス

銅欠乏症

著者: 高見昭良

ページ範囲:P.1030 - P.1032

はじめに

 銅欠乏は,経管栄養や亜鉛製剤の長期使用患者によくみられ,ビタミンB12や葉酸の欠乏症に似た血液異常や神経・胃腸障害を生じる.欧米では極めてまれであるが,わが国ではよくみられる.原因不明の貧血(MCVの大小にかかわらず)や好中球減少,認知機能低下を認める場合,銅欠乏を除外すべきである.

COPD死亡率減少に向けた日本呼吸器学会の取り組み—COMORE-By2032

著者: 川山智隆

ページ範囲:P.1034 - P.1038

はじめに

 令和5年5月31日「健康日本21(第三次)」の基本方針が公表され,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の対策としては,「健康日本21(第二次)」(2013年公布)の目標であった認知度向上を引き続き行うことに加え,「発症予防,早期発見・治療介入,重症化予防」など総合的に対策を講じていくことが示された1).また,令和3年度のCOPD死亡者数13.3人/人口10万人を,令和14年までに10.0人まで減少させるという新たな目標が掲げられた.日本呼吸器学会は健康日本21(第三次)の方針に対応すべくProject for COPD MOrtality REduction BY 2032(COMORE-By2032プロジェクト)を立ち上げた(図1)2).この背景にはCOPD認知度が低く,死亡率が高い日本の現状がある.日本では推定COPD患者数530万人に対して3),医療機関通院者数は22万人(全体の5%)に留まる1).早期治療介入の意義は証明されているにもかかわらず,早期発見が追い付いていない4,5).COPDの診断遅れの1つに診断確定に必須である肺機能検査の低普及率や結果解釈の難解さが挙げられる.COPDの病態を正しく評価する上で,肺機能検査への理解を深めることが先決である.

 本稿では健康日本21に対するCOMORE-By2032の目的を達成するために肺機能からみたCOPDの病態について解説する.

FOCUS

在宅酸素療法(HOT)—臨床検査技師に必要な知識

著者: 谷山友太郎 ,   三上優

ページ範囲:P.1040 - P.1043

はじめに

 現在,わが国では3〜4人に1人が65歳以上の高齢者であり,今後も高齢化率の上昇傾向が見込まれる.こうした超高齢社会においては,病院への通院診療だけではなく,在宅診療の重要性が高まっている.特に,慢性呼吸不全患者の自宅や社会での生活,および在宅看取りを考慮して在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)を導入する機会が増えている.1985年に初めて慢性呼吸不全患者に対するHOTの保険適用が認められてから,適応疾患が広がっており,現在では使用患者は,2020年時点で約17〜18万人いるとされている1).本稿では,HOTの目的や適応基準,管理上の注意点などについて,呼吸生理などの観点を交えて解説する.

採血業務における新人教育のポイント—採血技術と患者対応能力

著者: 鈴木敬子

ページ範囲:P.1044 - P.1046

はじめに

 採血業務は,患者に針を刺すという侵襲的行為を有します.そのため,患者にストレスを与え,採血者自身も危険やトラブルに遭遇する機会が多い業務といえます.そのため,新人は,採血技術のみならず,患者対応能力も身に付ける必要があります.慶應義塾大学病院(以下,当院)で行う採血教育は,採血技術と患者対応の両方について実施していますので紹介します.

病気のはなし

尿路結石

著者: 渡辺晃太 ,   井川掌

ページ範囲:P.1048 - P.1051

Point

●尿路結石は泌尿器科疾患の中でも頻度の高い疾患の1つであるが,診断と治療のためには専門的知識と技術も必要となる.

●尿路結石自体は生命に関わる疾患ではないが,致命的な感染症の原因となったり,鑑別診断には緊急の処置・手術が必要な疾患も含まれるため,診察の最初の段階である問診と理学所見・尿検査と血液生化学検査をしっかりと行うことが重要である.

●治療法は結石の状態により,保存的治療と積極的治療がある.

症例からひもとく疾患【新連載】

腎細胞がん

著者: 大日方大亮

ページ範囲:P.1054 - P.1058

Point

●腎細胞がんの診断には,超音波,CT,MRI,血液検査が用いられる.

●腎細胞がんの治療は,外科的治療と薬物治療に大別される.

●IMDCリスク分類は,転移性腎細胞がんの予後予測に有用である.

●免疫チェックポイント阻害薬とTKIは,副作用管理が重要である.

過去問deセルフチェック!

ABI(足関節上腕血圧比)検査

ページ範囲:P.1047 - P.1047

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.1077 - P.1077

 足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)は,閉塞性動脈硬化症やバージャー(Buerger)病などの末梢動脈疾患による下肢動脈の血流障害を判定するための検査です.検査法はポケットドプラ計と血圧計を用いた方法が基本であり,両側の上腕動脈および足関節(後脛骨動脈と足背動脈)の収縮期血圧を測定し,左右それぞれの足関節収縮期血圧(後脛骨動脈と足背動脈のどちらか高い方)を,左右上腕動脈のどちらか高い方の収縮期血圧で除した値がABI値となります.

 算出式:ABI=足関節収縮期血圧(後脛骨動脈収縮期血圧と足背動脈収縮期血圧のうち高い方)/上腕動脈収縮期血圧(左右のうち高い方).

臨床検査のピットフォール

Clostridioides difficile感染症の検査におけるピットフォール

著者: 長岡里枝 ,   原稔典

ページ範囲:P.1060 - P.1063

はじめに

 Clostridioides difficile感染症(CDI)はClostridioides difficile(C. difficile)が産生する毒素(toxin A, toxin B)によって引き起こされる疾患である.抗菌薬使用などによって腸内細菌叢が攪乱された状態で発症することが多く,重症化や再発のリスクが問題となっている.また,C. difficileは芽胞を形成しアルコール抵抗性であることから院内感染の原因となるため,医療施設において早急に対処すべき深刻な感染症である.よって,CDIを診断するための検査は重要であり,迅速かつ正確な検出が求められる.

 現時点でさまざまな検査法が実施されているが,検体のセレクトや取り扱い,各検査法の検出感度,検査結果の解釈など,注意すべき点がいくつも存在する.本稿ではそれぞれのピットフォールについて,広島大学病院(以下,当院)の検討結果を交えて紹介する.

Q&A 読者質問箱

カラードプラ法を用いた血流の方向について,評価の仕方を教えてください.

著者: 勝又英明

ページ範囲:P.1064 - P.1067

Q カラードプラ法を用いた血流の方向について,評価の仕方を教えてください.

A カラードプラ法〔color doppler imaging(CDI)またはカラーフローマッピング(color flow mapping:CFM)〕は,探触子に近づく方向の血流を赤,遠ざかる方向の血流を青で表示します(図1).

ワンポイントアドバイス

乳癌術後患者のリンパ浮腫と採血・血圧測定への対応

著者: 清水大輔

ページ範囲:P.1068 - P.1069

はじめに

 乳癌関連リンパ浮腫は,乳癌手術によるリンパシステムの破綻により,適切なリンパ液の流れが阻害され,組織間質にリンパ液が貯留することで起こる.今回は,リンパ浮腫について,検査技師が知っておきたい知識を紹介する.

臨床医からの質問に答える

“測定の不確かさ”って何ですか?

著者: 村越大輝

ページ範囲:P.1070 - P.1073

はじめに

 臨床検査において“真に正しい測定値”を求めることは困難であるといわれていますが,臨床検査技師は“限りなく正しい測定値”の報告に努める必要があります.その確認作業をするために,内部精度管理や外部精度管理により,ばらつきを示す精密さやかたよりを示す正確さを監視し,測定値の信頼性を担保しています.信頼性を担保する精密さと正確さは合わせて精確さといわれています.精確さは,真の値とみなしている一次標準物質の認証値と一次標準物質を繰り返し測定することで得られる測定値とのかたより(系統誤差)と,測定値のばらつき(偶発誤差)により評価をすることができます1).すなわち,“測定値と真の値の差”を誤差として,誤差が小さければよい状態であると評価する考え方になります.一方で測定値の信頼性を表現しようとすると,理想的な概念である真の値を求めることが難しく,推定した真の値を用いることや測定条件(併行精度や室内,室間再現精度など)によりばらつきの大きさが異なることから,画一的に表現することは容易ではありません.

 そこで用いられている考え方が,“測定の不確かさ”になります.測定の不確かさは,測定値からどの程度のばらつきの範囲に真の測定値が存在するかを表現することで,信頼性の指標としています.本稿では,測定の不確かさの概念と検査室で広く用いられている算出方法について解説します.

連載 やなさん。NY留学記・11

祝・留学1年!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.1075 - P.1075

 「留学1年経過,おめでと〜う,私!」アメリカ独立記念日に盛大に空を彩る花火に向かってマグカップを掲げる.この日のために大切に保管しておいたアイスワインをついに開封(ワイングラスがないのでマグカップ).そう,柳田は2度目のアメリカ独立記念日を迎えたのだ.昨年は渡米直後のため外出するのも不安で,花火鑑賞どころではなく部屋にこもっていた…….あれから1年! 途中で日本に逃げ帰ると思っていたが,まさか1年も過ごせるなんて.今年は寮の近くの丘の上に立ち,クイーンズ,ブルックリン,マンハッタン,360°の空に揚がる花火を眺め,去年の今頃を思い出しながら,アメリカ独立記念日と柳田の留学1年記念を祝い過ごした!

 独立記念日の翌日,荷物をまとめて……渡米後初の国内プライベート旅!ワシントンD.C.へ.ニューヨークからは列車で約3時間半.ワシントンD.C.はアメリカの首都で三権機関〔国会議事堂(連邦議会議事堂),ホワイトハウス,最高裁判所〕,そして,柳田の好物である美術館や博物館が数多くある街なのだ.いろいろな場所へ行こうと計画を立てていたのだが……猛暑! 暑すぎて外を歩いていられないほど.とにかく日差しが強くて,肌が痛い.ヘロヘロになりながら美術館,博物館,リンカーン記念館,国会議事堂に行ったのだが……朦朧としていたせいか,何を見たのかほとんど記憶がない(笑).旅の最終日は列車が約3時間も遅れ,ニューヨークに戻れたのは深夜だった(肉体的にも精神的にもヘビーな旅だった……).いろんな意味で記憶に残る旅だった.

ラボクイズ

微生物検査

著者: 引田芳恵

ページ範囲:P.1078 - P.1078

8月号の解答と解説

著者: 米谷正太

ページ範囲:P.1079 - P.1079

書評

ミニマル発生学

著者: 市原真

ページ範囲:P.1033 - P.1033

ラングマンのとなり

 医師21年目である私の手元には,発生学の本がぜんぜんなかった.唯一持っていたのは,学生時代に購入した『ラングマン人体発生学 第7版 日本語版』(医学書院MYW,1999年3月発刊の第5刷)だけ.発生学の本なんてなくてもいいでしょ,現役医師なら一冊あれば十分でしょ,と,なぐさめてくださる方もいらっしゃるかもしれない.でも,少なくとも私は,臨床に暮らす日々でずっと不全感を抱いていた.

 「近年のトピックスとして中腎様腺癌が挙げられ……」

ジェネラリストのための内科診断リファレンス 第2版

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.1053 - P.1053

診断エクセレンスをめざすジェネラリストが待っていた改訂版が出た

 10年前にも本書の書評を書いた.本書を読んだ感想をまとめると,本書はシステム2的な分析的推論を行うための当時最強のツールであり,EBM実践のためのクイックなデータブックである,であった.臨床疫学の各論必携本と呼んでもよい.

 あれから10年,われわれジェネラリストが待っていた第2版がついに出た.待ちこがれていた理由は,医学は日進月歩で変化し発展するからだ.新たな疾患概念や病歴,身体所見,そして診断検査のデータを供給する論文が無数に出版されている.3万もの論文の中から新しくかつ重要な情報を追加してくれている.

医学研究のための 因果推論レクチャー

著者: 中山健夫

ページ範囲:P.1076 - P.1076

奥深く,魅力ある因果推論の世界へと誘う

 本書の執筆者である井上浩輔先生,杉山雄大先生,後藤温先生の3先生は,人間・人間集団・社会を対象とするパブリックヘルス,ヘルスサービス,疫学の分野において,最も目覚ましい活躍をされている気鋭の医学研究者です.本書は,先生方自身の高いレベルでの研究成果に基づき,近年世界的に関心が高まっている因果推論の最前線の知見を入門から専門レベルまで解説された充実の一冊です.

 医学における因果推論は,古典的には単一病因説に始まり,多要因病因論から,1964年に米国公衆衛生総監(Surgeon General)によって取りまとめられた「喫煙と健康」報告書の5基準(一致性,強固性,特異性,時間性,整合性),1965年に英国の統計学者Bradford Hillsによる9視点(関連の強さ,一貫性,特異性,時間的先行性,生物学的勾配,可能性,合理性,実験験的証拠,類推)が示され,その後,米国の疫学者Kenneth J. Rothmanがパイモデルを提案しました.近年では,利用可能な大規模データベースの充実と,ランダム化比較試験が困難な状況での観察研究の意義が見直される流れの中で,解析手法の高度化とともに,因果推論の方法論が大きく発展しました.

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目次

ページ範囲:P.1002 - P.1003

あとがき・次号予告

著者: 横田浩充

ページ範囲:P.1080 - P.1080

 現在7月下旬,夏です.夏のレジャーと言えば海水浴,プール,キャンプ,ハイキング,花火大会,サイクリングなどの文言が連想されます.しかしながら,近年ではレジャーを楽しむ前の対策が必要となりました.全国的な猛暑,猛暑対策が不可欠です.近年の猛暑はただ事ではありません.連日の猛暑から命を守る,のみならず落雷・ゲリラ豪雨・突風といった災害からの退避・対策も必要となりました.連日のように全国で日中の猛暑からの一変,落雷・ゲリラ豪雨・突風による被害が報告されています.気候・天候の把握を十分しておかないと外出や遠出の旅行もできなくなりました.世界においても同様で,国連のグレテス事務総長は「地球が沸騰に近づいている」と警告,各国に気候変動対策の強化,緊急の行動を求めました.地球が沸騰した状態において海面水温の上昇,エルニーニョ現象が近年の異常気象を頻発させています.地球温暖化の原因が分析されていても対策が進まない点には歯がゆい思いです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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