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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術52巻12号

2024年12月発行

雑誌目次

技術講座 病理

ホルマリンおよび有機溶剤の管理・廃棄方法

著者: 葉山綾子

ページ範囲:P.1170 - P.1178

Point

●病理検査室で取り扱う試薬の中には毒劇物,有機溶剤,特定化学物質など法令によってその取り扱いが管理されているものがあります.

●各法令に基づいた取り扱いと管理の仕方を理解し,業務を遂行しましょう.

●各自の健康を守るため,ホルマリンおよび有機溶剤の性質を理解し,検査室全体で対策しましょう.

血液

骨髄異形成腫瘍(MDS)検査のコツ

著者: 澤田朝寛

ページ範囲:P.1179 - P.1184

Point

●骨髄異形成腫瘍(MDS)は,芽球増加や血球形態異常(dysplasia:異形成)に伴う血球減少が最大の特徴です.

●MDS診断は,遺伝子異常を除いて芽球や正常の血球形態と異なる異形成について判別が必要など形態学的評価が必要であり,検鏡者の熟練技能が求められます.

●異形成の判別には検鏡者の熟練技能が求められるため,施設内および施設間差の是正のために適切な教育研修プログラムの確立が必要です.

生理

成人先天性心疾患 フォンタン術後の心エコー

著者: 門田尚子

ページ範囲:P.1186 - P.1192

Point

●フォンタン手術は,ポンプになる心室を1つしかもたない先天性心疾患(機能的単心室)のチアノーゼを改善するための手術です.

●フォンタン術後は,肺循環のための心室をもたず,肺へは中心静脈圧でのみ流れるので,肺血管抵抗の上昇は循環破綻の原因になります.

●術後遠隔期の心エコーでは心室機能,弁逆流,血栓の有無,フォンタンルートを評価します.

シリーズ 病態生理から読み解く腹部エコー検査・8 各論

消化管疾患を読み解く腹部エコー検査のポイント

著者: 関根智紀 ,   林涼子 ,   木内清恵 ,   志村謙次

ページ範囲:P.1194 - P.1199

Point

●消化管疾患の腹部エコーは,病態生理を読み解いてフローチャートの理解のもとに検査を円滑に進めます.

●検査を円滑に進めるポイントは,さまざまな消化管疾患を経験知にすることです.

●消化管疾患の確定診断を進めるには,類似する病変を否定する判読力が大切です.

トピックス

エクソソーム・リキッドバイオプシーによるがん検査

著者: 吉岡祐亮

ページ範囲:P.1200 - P.1203

リキッドバイオプシー

 ヒトは体重の60%程度は水分で構成されており,体重の約20%は細胞外に存在する,つまり体液として生体内に存在していることになる.体液は,ただ水が流れているわけではなく,血球細胞やさまざまな物質を含んでいる.リキッドバイオプシーとは,liquid(体液)+biopsy(生検)という言葉から成り立っている.Biopsyは生検と日本語訳されることが多いが,bio(生命,生体)+cpsy(目,視る)という言葉を語源としてもつため,体の状態を診るというニュアンスを含む.つまり,リキッドバイプシーとは体液に含まれる何かしらの物質や成分を利用して体の状態を診ることを指す言葉として用いられている.現在,リキッドバイオプシーとして血液中を循環するがん細胞(CTC:circulating tumor cells)やゲノム(ctDNA:circulating tumor DNAもしくはcfDNA:cell free DNA)を検出・解析することでがんの診断や薬剤の投与選択に使用されている1).すなわち,バイオマーカーや腫瘍マーカーのような役割を担うものの中で体液中の物質を解析対象としているものである.リキッドバイオプシーの解析対象物質は微量であることが多く,組織生検に比べて感度や特異性が低いとされている.しかし,リキッドバイオプシーは,比較的侵襲性の低い方法で血液や尿,唾液などの解析試料を採取でき,組織生検と比較して迅速かつ繰り返し検査できる利点がある.従って,診断の補助を行うという点で優れており,従来の組織生検と組み合わせることで,より包括的な診断や治療計画を立てることが可能である.

医療技術部門管理資格認定制度/医療管理者資格認定制度

著者: 深澤恵治

ページ範囲:P.1204 - P.1207

はじめに

 日本臨床衛生検査技師会(以下,日臨技)では「医療技術部門管理資格認定制度/医療管理者資格認定制度」が導入される以前より,2011年度から「認定管理検査技師制度」を創設していた経緯もある.募集停止まで136名の認定者を輩出してきたが,創設当時の医療環境を背景に,臨床検査部門の管理者やリーダーとしてなりえる資質をもった臨床検査技師の育成を目的として設計していた.

 しかしながら,少子高齢化や地域医療の変革が求められる2035年問題に象徴されるように,私たち臨床検査技師のあり方を劇的に改善する自己変容(パラダイムシフト)が求められるようになったこと,「認定管理検査技師制度」が想定してきた管理者要件はもはや「当たり前」で,それ以上の資質・能力が望ましく,これから医療機関のリーダーを担う層から訓練・育成しなければならないことなどの問題点が散見されていた.さらに医療機関経営者に一目を置かれるような新たな認定制度に移行させるべく「認定管理検査技師制度」の見直しについて議論を重ね,より具体的な名称である「医療技術部門管理資格認定制度/医療管理者資格認定制度」として2019年度から創設したところである.

劇症型溶血性レンサ球菌感染症—増加の背景と細菌の特徴

著者: 吉澤定子

ページ範囲:P.1208 - P.1211

はじめに

 A群溶血性レンサ球菌(group A Streptococcus pyogenes:GAS)による劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)は,1987年に米国で最初に報告され,日本においては1992年に初めて報告された.死亡率は約30%と高く,「人食いバクテリア」などとメディアでは呼称され近年話題となっている.本稿では,GASの細菌学的特徴に加えて,STSSの基礎知識,疫学,病態について解説する.

FOCUS

頭部外傷診療における血液バイオマーカーの活用

著者: 末廣栄一

ページ範囲:P.1212 - P.1215

はじめに

 血液検査のみで低侵襲的に疾患の診断や病態進行の予測,治療効果の評価などが可能である血液バイオマーカーの有用性は高い.一般的には腫瘍の治療効果の評価や,再発の有無の評価における腫瘍マーカーの使用が散見される.救急医療分野においては,虚血性心疾患領域での活用が最も多い.例えば,胸痛を主訴とする患者に対して高感度心筋トロポニンIを用いた評価を行い,見逃しによる病態の悪化を防ぎ,転帰改善に貢献している.

 近年,頭部外傷の分野においても血液バイオマーカーの活用が試みられている.特に軽症頭部外傷では,その臨床症状が乏しい上に,突然かつ急激に病態が悪化して転帰不良となるケースが散見される.そのため,軽症頭部外傷と甘く見ずに迅速に診断して,病態進行の予測をすることが重要である.

 これまで,頭部外傷の診断は,頭部CTの撮影像を用いて行ってきた.しかし,頭部CTを撮影できる施設は限られており,制約が生じる.そこで,頭部外傷をより簡便に診断する試みとして,血液バイオマーカーが注目を集めている.本稿では,頭部外傷の評価に用いられる血液バイオマーカーの紹介と,臨床現場における有用性について概説する.

敗血症の病態理解と新規標的分子

著者: 新貝茜 ,   伊藤隆史

ページ範囲:P.1216 - P.1218

はじめに

 「敗血症診療ガイドライン2024」において,敗血症は“感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり,重篤な臓器障害が引き起こされる状態”と定義されている1).また,敗血症の中でも,急性循環不全により細胞障害・代謝異常が重度となって死亡の危険性が高まった状態は“敗血症性ショック”と呼ばれ,死亡率は約3割にも及ぶ.敗血症患者の生命を奪っているのは,多くの場合,微生物そのものではなく,微生物を排除しようとする生体反応である.調節不能な生体反応が,致死的臓器障害に結びついているのである.

感染症の流行を捉える

著者: 原祐樹

ページ範囲:P.1219 - P.1221

はじめに

 感染症には流行が存在しており,インフルエンザウイルスのように季節性の流行がみられる感染症から,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のように季節性はないが定期的な流行がみられる感染症,あるいは特定の国や地域でのみ流行している感染症など,一口に“感染症の流行”といってもその特性は多様である.感染症の流行は臨床検査とは関連がない事柄のようにみえるが,実際にはさまざまな局面において私たちの臨床検査にも関連している.本稿では,感染症の流行を把握するためのデータベース,およびそれらの感染症検査への影響や感染対策などに活用する方法について概説する.

病気のはなし

急性リンパ性白血病

著者: 窪田博仁 ,   滝田順子

ページ範囲:P.1222 - P.1228

Point

●急性リンパ性白血病(ALL)は,リンパ系前駆細胞に染色体異常あるいは遺伝子異常が生じ異常な増殖を来す血液悪性疾患である.

●ALLの診断には形態学的診断の他,免疫表現型解析,細胞遺伝学的解析が重要であり,微小残存病変解析が治療反応性の評価に必須である.

●ALLにおいて細胞遺伝学的異常,治療反応性が予後因子として重要であり,これらに基づいたリスク層別化により治療方針を決定する.

●B前駆細胞性ALLの再発例に対して,ブリナツモマブ,イノツズマブ オゾガマイシン,CAR-T細胞療法などの新規治療により予後が改善された.

過去問deセルフチェック!

尿沈渣円柱

ページ範囲:P.1237 - P.1237

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.1250 - P.1250

 尿沈渣中に出現する円柱は,尿細管腔で形成される成分で,尿細管上皮細胞から分泌されるTamm-Horsfallムコタンパク(Tamm-Horsfall protein:THP)と少量の血漿タンパクがゲル状に凝固,沈殿したものである.形成される場所は,主に遠位尿細管や集合管である.

 円柱は,糸球体濾過率の低下,原尿流圧の減少,尿細管腔の閉塞などにより,尿が一時的に尿細管腔で停滞したことを示唆する.尿の濃縮により血漿タンパク濃度が上昇し,遠位尿細管より下部で分泌されるTHPとともに凝固,沈殿することで円柱の基質成分が形成される.

臨床検査のピットフォール

ちょっと待って! 生化学検査のその測定値は本当に正しいの?

著者: 和田哲

ページ範囲:P.1229 - P.1233

はじめに

 臨床検査を医療サービスとしてみたとき,誤った検査結果は誤った判断を招くことから,医師や患者へ報告される結果は正しいことが求められる.そのため,現在の臨床検査室では精度管理のみならず精度保証の概念の下,検査結果に対する保証が求められる.本稿では,タイトルである“その測定値は本当に正しいの?”について,

・検査において得られた測定値が何らかの理由で正しくない

・検査において得られた測定値は正しいが,患者の病態と合わない

という2つの視点から個別に解説していく.

Q&A 読者質問箱

採血時に,採血管の正しい順番が決められているのはなぜですか?

著者: 甲田祐樹

ページ範囲:P.1234 - P.1236

Q 採血時に,採血管の正しい順番が決められているのはなぜですか?

A 標準採血法ガイドライン(GP4-A3)1)(以下,GL)の中に,採血で推奨される採血管の順番が記載されています.本稿では,採血管に推奨される順番がある理由について簡単に解説します.適切なサンプル採取のために,臨床検査技師だけでなく採血に関わる全ての職種の皆さんのお役に立てば幸いです.

ワンポイントアドバイス

腹部超音波検査で大動脈疾患を精度よく捉えるコツ

著者: 船水康陽

ページ範囲:P.1238 - P.1240

はじめに 腹部大動脈観察の目的と課題

 腹部超音波検査時に腹部大動脈の観察を行う主な目的は,腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm:AAA)の発見です.腹部大動脈瘤は原則無症状であり,実臨床では症状から診断に至ることは珍しく,また破裂症例の8割以上が救命不能であることから1,2),いかにして破裂前に発見し適切な治療を行うかが重要となります.

 しかし,腹部大動脈は,消化管ガスの影響などで観察困難な場合もあり,腹部大動脈瘤を見逃す要因となりますので対応策を試みる必要があります.また,腹部大動脈瘤の侵襲的治療の目安は,瘤の形状,瘤径,拡大傾向などであるため,正確な評価を行う必要があります.そこで,以下に腹部大動脈瘤を精度よく捉えるコツと評価法を解説します.

臨床医からの質問に答える

CRE(カルバペネム耐性腸内細菌目細菌)とCPE(カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌)はどう違うのですか?

著者: 原稔典

ページ範囲:P.1242 - P.1247

はじめに

 近年,感染症治療の切り札として使用されているカルバペネム系薬に耐性を示す腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales:CRE)が,問題となっている.日本においては2014年9月から感染症法の5類感染症に指定され,届出対象となっている.届出対象指定から約10年が経過するが,米国疾病予防管理センター(CDC)や感染症専門医も危機感を強めており,マスコミでは“nightmare bacteria(悪夢の耐性菌)”として注目され,医療関連感染における重大な脅威をもたらす感染症として位置付けられている.中でも,カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales:CPE)は,感染対策および疫学上,特に注意が必要である.

 本稿ではCREに加え,混同しがちなCPEについて,両者の違いや検出状況,治療や感染対策でどのような点に注意が必要かを解説する.

オピニオン

日本臨床検査振興協議会の活動

著者: 村上正巳

ページ範囲:P.1248 - P.1249

 日本臨床検査振興協議会(https://www.jpclt.org/)は,2005年4月に設立され,日本臨床検査医学会,日本臨床衛生検査技師会,日本臨床検査専門医会,日本臨床検査薬協会,日本衛生検査所協会の臨床検査に係る主要な5団体からなり,国民,行政および医療機関などに,広く臨床検査の重要性の理解を求め,その適正な活用を促進し,国民の健康に寄与することを目的として活動しています.2022年4月には,会員団体のご協力により,一般社団法人化することができました.マスコットキャラクターの「りんしょう犬さん」(図1)を見たことがあるという方も多いと思います.

 日本臨床検査振興協議会では,診療報酬委員会,医療政策委員会,大規模災害対策委員会,広報委員会,将来ビジョン検討委員会を設置しています(図1).

連載 やなさん。NY留学記・13

鍛えられています.

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.1251 - P.1251

 前回のエッセーで書いた,5月に米国のAI Pathology分野の学会で発表してから約半年が経過した.次は別の研究成果を米国・カナダの病理関連学会での発表を目指し,抄録を作成している! 今回の研究は柳田がラボに入ってから,コツコツとひとりで地道に続けてきた研究だ.なんとか発表したい!のだが……抄録を書くのって,こんなに難しかったっけ!? 何が難しいかって,英語だし,2,500文字だし(2,500文字って英語だとそんなに長い内容が書けないのよ!).その2,500文字に背景,研究デザイン,結果,結論をまとめる.そして,抄録受理率が約4割と噂の学会で発表枠を勝ち取れるだけの内容を書かなければならない.はい,無理ぃ!だが,無理は承知でやってみる(それが柳田です).しかし……抄録を作成し始めてから3カ月も経過しておるのだよ.ボスにダメ出しをされまくり,「ここの英語の表現,おかしい(笑)」「ひぃ〜,やっぱり英語できません〜」というやりとりも繰り返しながら.いや,本当にボスは気長だわ.何度も何度も……申し訳ない気持ちでいっぱいです…….

 そして,共著の同僚や病理医,病理部門の偉い人(←表現っ)にも,抄録を添付して「この抄録で勝負したいのですが,どうでしょうか?」とメールを送った.病理部門の偉い人はお忙しく,「メールの返事もほぼ返って来ない」と同僚が言っていた.噂ではちょっと怖い?厳しい? とのこと.許可をもらえないのではないかとハラハラ.メールの文章を書いては直しを繰り返し,やっとメールを送信.すると2分後……「Yes, please do! Thank you.」と返事が来た.めちゃくちゃ速くて軽快な返事に笑ってしまった.あんなにハラハラしていたのに.だが,同僚と病理医からは「え?そんなに?」というくらいの量のダメ出し! 病理医から返ってきた文章の添削は,元の文章の影も形も残っていなかった……英語って難しいね(涙).同僚(プログラマー)からは,そもそもの内容に対するダメ出し.しかも,パソコンの画面が真っ黒に見えるほど,びっちり書き込まれた指摘内容.あ…ありがたいよね,こんなに真剣に考えてくれるんだもんね.とはいえ,それを見て膝から崩れ落ちる柳田.こんなに抄録作成に時間をかけたことは初めての経験なので新鮮ではあるが……抄録作成力と心が鍛えられている(←英語力は?).

ラボクイズ

輸血検査

著者: 丸橋隆行

ページ範囲:P.1252 - P.1252

11月号の解答と解説

著者: 道林智之

ページ範囲:P.1253 - P.1253

学会印象記

日本医療検査科学会第56回大会

ページ範囲:P.1203 - P.1203

 2024年10月4〜6日に,パシフィコ横浜で日本医療検査科学会(旧 日本臨床検査自動化学会)第56回大会が開催されました.大会長は橋口照人先生(鹿児島大学病院 検査部長).初日の挨拶では,「産・官・学連携は大変重要で,それらから生まれた検査機器は先達の知の努力が生んだ天才.これら先達の努力を理解できる大会としたい」と話されました.プログラムでは“フレイル”に伴う疾病構造の変化を見据えた高齢者医療に関する講演や,医療DXについての企画が随所に組まれ,シンポジウムや日常臨床に役立つ各種技術セミナーなど,大会長の「これからの医療に“+α”のものを提供したい」というお考えが形となった3日間でした.

 展示ホールでは「臨床検査機器・試薬・システム展示会 JACLaS EXPO 2024」が同時開催され,過去最高の140社余が出展し,最先端の機器に並び,多くの参加者で賑わっていました.

書評

見て学ぶ 一般検査学アトラス—外観検査から顕微鏡検査まで フリーアクセス

著者: 下澤達雄

ページ範囲:P.1185 - P.1185

教科書に望むことが十分に満たされる本を見つけました

 大学の教員として,学生,スタッフに,教科書もいいけど,「読むなら論文」と伝えてきました.教科書は査読がないので独りよがりの記述が入ります.また,書いてから時間がたつため最新の情報は含まれません.SNSなど無料で手に入る情報が多くなった現在,アトラスのような図表はインスタグラムのような手軽なツールに置き換わるものと考えています.

 それでも教科書が作られるのは,専門の分野に特化している論文に比べて「網羅性・わかりやすさ・教育支援」があることと,ケーススタディなどが含まれたものでは臨床応用ができるからです.SNSは,「体系学的な学習」「深い理解のための解説」「長期的リソースとしての検索,安定性」といった点で書籍に劣る面があります.

細胞診のベーシックサイエンスと臨床の実際 フリーアクセス

著者: 小松京子

ページ範囲:P.1241 - P.1241

細胞診断の力量のさらなるSTEP UPをめざして

 『細胞診のベーシックサイエンスと臨床病理』が発行されたのは1995年である.細胞像から診断を推定するアトラスとは異なり,科学的な視点に基づく他にはないタイプの本であり,長きにわたり愛用した.待望のリニューアル版である本書はさらに進化し,時代に即した内容となっている.

 第1章では基礎知識である分子生物学や遺伝子関連の知識はもとより,がん化のメカニズム・遺伝性腫瘍・腫瘍免疫など,多くの細胞診の教本にはあまり詳細に書かれていないところが丁寧に解説されている.ゲノム医療に関する第2章は最新情報満載で,NGS・がんゲノムプロファイリング・分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬・がんゲノム医療に関する事項・ゲノム診療における細胞診検体の取り扱いなどがエキスパートによってわかりやすく解説されている.がん遺伝子検査の精度管理や遺伝子パネル検査の現状などは,臨床現場にとって非常に重要な事項である.さらなる進化を遂げる領域であり,病理細胞診領域にも深く関わる分野である.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1168 - P.1169

あとがき・次号予告 フリーアクセス

著者: 平石直己

ページ範囲:P.1254 - P.1254

 普段プロ野球にさほど興味がない方でも,メジャーリーグで活躍中の大谷選手だけは気にされている方も多いのではないでしょうか.詳しくない私でも,各種メディアで取り上げられているのを見るたびに,その凄さに感動すら覚えます.このあとがきを依頼されたときは,まだ“50-50”を目指しているところでしたが,日々記録は更新され,最終的にシーズン成績を“54-59”にしてチームをリーグ優勝にまで導いています.

 忘れてはならないのが,彼は昨年9月に肘の手術を受けリハビリ中であることです.2024年は打者として専念すると,2023年の9月20日に報じられました.そのちょうど1年後の2024年9月20日にメジャー史上初の“51-51”を達成しています.打席に立てば,敵味方関係なく彼の一挙一動に観客が釘付けでした.肘の手術という,選手としてネガティブなイベントを経ても,今日に至るまでパフォーマンスを出し続けることの素晴らしさや,大記録を目の前にしてもそのプレッシャーに負けることなく,常に野球を楽しむような表情を見せているのがとても印象的でした.ハイパフォーマンスを維持し続けるその原動力は,きっと心から野球を愛し,チームのために今自分が何をするべきかなどの状況判断も一流なのだと思います.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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