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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術6巻12号

1978年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

ポルフィリン症

著者: 佐々木英夫 ,   蛯谷功 ,   片桐忠

ページ範囲:P.938 - P.945

 ポルフィリン症(porphyria)は遺伝性代謝疾患の中では最も研究の進んだ分野の一つである.本症はポルフィリン代謝障害に基づく症状が主体となり,ポルフィリンないしその前駆物質(ポルフィリン体)を大量に産生し,排泄する疾患である。最近では後天的にも種々の薬剤や疾患によっても生ずることが分かり,実験的ポルフィリン症の作製にも応用されている.しかし,肝炎や癌などの基礎疾患があり,尿ポルフィリンが増加するが,そのための臨床症状を呈さぬポルフィリン尿(porphyrinuria)とは一応区別されている.
 ポルフィリン症の分類は表1のごとく,ポルフィリンの代謝障害のある臓器の差により,骨髄型,肝型及び骨髄肝型の3つに分けられ,更に増加したポルフィリンの種類や原因によって細別される.しかし,臨床的には光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症と急性腹症,四肢麻痺,ヒステリーなどを呈する急性ポルフィリン症に分けるのが実際的であり,以下それ沿って述べる.

技術講座 生化学

検量線の作り方 Ⅱ

著者: 大森昭三

ページ範囲:P.961 - P.966

 前号では最も基本的な検量線のかき方やその際必要になる二,三の基礎知識について概略の説明を行った.
 前にも述べたように,検量線は物質濃度と吸光度の関係をグラフに示したもので,理論的には反応原理や測定条件が同一であれば"いつでも""どこでも"同じ検量線が得られるはずである.しかし,実際には各検査室で用いられている試薬の組成や装置の性能などに幾分違いがあるので,直線となるべきはずのものが曲線を描いたり,その傾きがいろいろに変わったりする.

緩衝液の作り方・保存・チェック

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.967 - P.970

 臨床化学検査のみならず,微生物の培養,血球の取り扱い,免疫化学反応,切片の染色など臨床検査の多くの場面に登場するのが緩衝液であるから,その作り方を習練しておくと,検査,研究などで大いに有力な武器となろう.
 緩衝液のキット製品も市販されており,純水を用いて一定の容積になるように溶解すれば所望の水素イオン濃度が得られるようにもなっているが,これも自家製造することが可能である.

細菌

抗酸菌の同定法

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.971 - P.976

 検査室での抗酸菌の同定は,長い間,結核菌とRunyonのI〜IV群に分類することであった.分離株をこれに当てはめてゆくと,非病原菌が混入してくるので,それを除外することが必要となる.病院検査室では,分類学の研究室と違って,病原菌の分類同定のみが可能な方法を持っているにすぎず,非病原菌をそれに当てはめることはできない,つまり非病原菌の同定をやる機能は持っていない.ここに述べる同定法は,そんなわけで,分離抗酸菌を,人の疾患と関連のあるものに限定することから始めている.細菌検査室は,生化学そのほかの検査室に隣合っているので,そこのスタッフの知恵も借りて,能率よい検査法を選ぶべきであろう.今回紹介する方法は,病院検査室のためのものであるが,細菌学的にも十分批判に耐えるものである.簡単に言えば,分離された株が,既知の病原菌であるか,あればどの菌種かを検するもので,関係のない非病原菌は,できるだけ除外した(表1参照).

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

酵素共役反応の組み立て

著者: 中甫

ページ範囲:P.946 - P.954

 臨床化学分析に用いられる手法は近年著しい変遷を示し,多くの測定法が塗り変えられつつあることは周知のごとくである.特に基質に対して特異的に作用する"酵素"を試薬として用いて分析を行う,いわゆる酵素的測定法(Enzymatic Analysis)の急速な普及には目を見張るものがある.臨床化学分析法の成立の5条件,すなわち,①迅速性,②微量試料,③正確性(特異性も含む),④精密性,⑤簡便性,の諸条件を比較的満足させるとともに公害の少ない測定法として注目されることは当然のことと言えよう.しかし一方,実用面が先行し理論的検討がなおざりにされていることも否定できない.そこでこの機会に二,三の例を通して酵素的測定法の理論的背景について複雑な理論を可能な限り単純化して考えてみることにしたい.

血小板凝集

著者: 本宮武司 ,   山崎博男

ページ範囲:P.955 - P.960

 血小板が異物表面に接触すると直ちに血小板同士が付着する現象は,1885年EberthとSimmel-bushによりviscous metamorphosisとして記載された.この血小板が生体内で何らかの機能を果たしているとの認識以来,血小板の凝集現象(Plateletaggregation)は出血時防衛細胞として働く血小板の特性をよく表現するものとして,多くの検討がなされてきた.血小板は血管内腔面の変化に対して短時間内に反応することから,広く生体の血管壁変化,血管壁と血液の相互作用が血小板機能に反映されると考えられる.
 血小板の働きには止血栓の形成,異物食作用,ウイルス,細菌,免疫複合体に対する干渉作用のように生体に有利に働く場合と,病的血栓形成のように不利に働く場合がある.臨床上用いられる血小板凝集能検査の意義は,これら両面での血小板の働きを明らかにしようとするものである.凝集能の低下は既に種々の血小板異常症など出血性疾患で明らかにされているが,今後は血栓性疾患など,より多くの疾患で定量的に血小板機能を把握し,その予防と治療に役立つ方法を開発しなければならない.このような背景の下に,最近急速に進歩を逐げた血小板を取り巻く生理,薬理の知見を踏まえて血小板凝集の基礎的意義を考えてみたい.

マスターしよう基本操作

マイクロピペットの操作法

著者: 五十嵐富三男 ,   中山年正

ページ範囲:P.977 - P.984

 臨床化学用の微量ピペットは古く,歴史的にはオストワルド型に始まり,モール型,キルク型,コンストリクション型などいろいろな型式が工夫されてきた.検体数の増加と多項目測定のために臨床化学の定量が微量法,そして現在では,超微量法へと発展し,微量の試料を,いかに安全,迅速に,そして精密に測るかという要請から,目的に応じてサンズピペット,ノック式ピペット,コンストリクション式ピペット,マイクロシリンジピペットなど種々発売されている.ここでは,サンズピペット,エッペンドルフピペット(ノック式),ペデルセンピペット(コンストリクション式)について操作法,注意点,をデータを加えながら解説する.

私の学校

鳥取大学医療技術短期大学部衛生技術学科—風土に合った学校の基盤作りに活気

著者: 成相隆志

ページ範囲:P.987 - P.987

 城山のふもと錦公園の中ほどに私たちの学校があります.四階の講義室から全影を眺められる日本庭園と,爽やかな中海からの風が実習,講義と追われる忙しさの中で私たちに一時の安らぎを与えてくれます.
 短大の歴史,と言ってもまだ浅く来年になってやっと一期生を社会に出し,これから大学の歴史を一つ一つ刻み込んでゆかなければなりません.校舎のほうも去年の10月,竣工式を終えたばかりで,設備のうえで多少の不備は残っていますが,他に例をみない機器を導入するなど日ごとに充実していき満足のいく実習が行われつつあります.

文豪と死

三好達治

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.988 - P.988

 三好達治(1900〜64)は大阪市の生まれ,「四季」の代表的詩人であった.三高をへて東大仏文学科を卒業した.三高の同級生には桑原武夫,丸山薫らがいた.東大の同級生には小林秀雄,中島健蔵らがいた.
 「青空」「詩と詩論」「詩・現実」などの同人となって詩や詩論に活躍したが「四季」を育て,多くの優れた「四季」派の詩人を育てたことは,堀辰雄とともにその功績が大きい.

最近の検査技術

パラコアグレーションテスト

著者: 藤巻道男 ,   池松正次郎 ,   加藤正俊

ページ範囲:P.989 - P.994

 血液中にトロンビンが形成されるとトロンビンによって,フィブリノゲンからフィブリノペプチドAとBが遊離してフィブリンモノマーが形成される.このフィブンモノマーはフィブリノゲンまたはプラスミンによって分解したフィブリン体分解物(fibrinogen and fibrin degradation products;FDP)と会合し,可溶性フィブリンモノマー複合体(soluble fibrin monomer complex;SFMC)を形成する.
 このSFMCは塩基性タンパクである硫酸プロタミンあるいはエタノールを添加するとフィブリン様物質(paraclot)を形成するので,SFMCの検出法としてパラコアグレーションテスト(paracoagulation test)がある.したがって,臨床的には凝固亢進状態(hypercoagulable state),血栓症(thrombosis)及び血管内凝固症候群(disseminatedintravascular coagulation;DIC)の凝血学的スクリーニングテストとして用いられている.

知っておきたい検査機器

偏光顕微鏡

著者: 山本吉蔵 ,   田中敬一

ページ範囲:P.995 - P.998

 偏光顕微鏡により生物試料を観察すると,その特異な複屈折像と光の干渉により作り出された色彩には,人々の目を見張らせるものがある.それにもかかわらず,その色彩の中に隠された理論が十分に理解されていないため,一般に広く利用されるに至っていない.それは偏光顕微鏡の理論がいささかやっかいなもので,敬遠されがちなためである.
 そこで,日常の偏光顕微鏡観察に必要な基礎的事項を簡単に述べ,更に,偏光顕微鏡の構造と観察方法を解説する.

読んでみませんか英文論文

心,肝疾患時の血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)のミカエリスーメンテン定数

著者: 角尾道夫

ページ範囲:P.999 - P.1001

 正常人と最近心筋梗塞を起こした患者ならびに流行性肝炎の患者で,血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の活性とKm(ミカエリスーメンテン定数)が検討された.AST活性は両患者群で上昇していた.心筋梗塞では血清ASTのKm値は変化はなかったが,流行性肝炎で総血清ビリルビンが13mg/dlより高いときには増加した.このようなわけで,心,肝疾患の鑑別診断にはAST活性の研究は,役に立たなかったが,流行性肝炎の診断にはKm値の決定が有用であった.

おかしな検査データ

ペニシリンに感性のバクテロイデス

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 臨床材料のうちで嫌気性菌検査が必要とされる材料は膿・分泌液,穿刺液,血液,髄液などのほか,常在菌の混入を避けて採取された材料が主な対象となる.このうちで膿は開放性病巣由来のものと閉鎖性のものとに区別され,嫌気性菌の検出率は特に後者で重要視されている.けれども検査室に提出される場合には必ずしも両者の区別が明記されているとは限らない.また開放性の病巣より採取された材料からも嫌気性菌は検出されるのでいずれの場合も嫌気性菌検査は好気性菌検査に併用されるべきであろう.
 さて,私どもは検出されるのが比較的まれであると思われるバクテロイデスを分離したのでここに紹介する.

検査の苦労ばなし

未知の細菌との出合い

著者: 小寺健一

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 1.シラス食中毒事件の発生
 昭和25年といえば,現在臨床検査技師学校において勉学に励んでおられる皆さんの多くは,まだこの世に誕生しておられなかったはずである.6月には平和であった極東も北鮮と韓国が38度線において激戦が開始され,平和が破れた年のことである.
 10月21日土曜日夕刊及び翌日の朝刊に大阪府の岸和田市,泉佐野市地区において大食中毒の発生が紙面に載っている.原因食としてシラス(カタクチイワシの稚魚を塩ゆでして半乾きにしたもの)が疑われ,シラスを作るときの食塩の代わりに亜硝酸ナトリウムを使用したのではないかとの情報を聞く.対岸の大火事と思っていると,思師藤野恒三郎教授(現,大阪大学名誉教授)が原因食のシラスを臨床細菌検査室に持って来られ,薬物の中毒も疑われるので,起病菌検出と並行して検査するようにと指示を受ける.

コーヒーブレイク

忘年会

著者:

ページ範囲:P.945 - P.945

 12月は忘年会のシーズン,忘年会をやらないと今年が終わらないと言われるように年中行事と化した.忘年会とは何のためにやるのかという人のために広辞苑によると"その年中の苦労を忘れるために,年末に催す宴会"とあります.
 忘年会は別に形式があるわけではなく,職場単位,仲間同志,いろいろな人々が自由に集まっては飲み,食い,騒ぐものです.普段仕事に追われて疲れが高じると気分転換も必要で旅行や,スポーツ大会などのレクリエーションなどを忘年会も兼ねて行うなど多種,多彩な催しとなっています.

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略語シリーズ

著者:

ページ範囲:P.954 - P.954

SA sensory aphasia;感覚失語.大脳損傷による言語障害で,音は聞こえるのでツンボではないが,言語としての理解に障害があるもの(→MA).
S-A block sinoatrial block;洞房ブロック.洞結節と心房との間の刺激伝導障害.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.985 - P.986

 861)肺高血圧;pulmonary hypertension
 肺動脈圧が高値を示す状態で,肺,心臓,肺血管などの疾患で起こる.肺循環の抵抗が増大し,本症を起こす原因疾患に慢性肺気腫,気管支拡張症,肺線維症,血栓など,先天性心疾患では心室中隔欠損,アイゼンメンゲル症候群(→1)などがある.

「検査と技術」第6巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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