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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術6巻4号

1978年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

巨赤芽球性貧血

著者: 奥田邦雄 ,   内山幸信

ページ範囲:P.272 - P.278

 巨赤芽球性貧血とはビタミンB12,葉酸,その他の造血因子の欠乏,ある種の代謝拮抗剤の投与及び先天性代謝異常などにより核の成熟に必要なDNAの合成障害を生じ,その結果末梢血や骨髄に特徴的な形態学的,機能的異常を来した疾患群の総称である.したがって"巨赤芽球性"という表現ではあるが,赤芽球系細胞のみならず,顆粒球,巨核球の幼若細胞及び頬粘膜細胞などにも同じような異常が認められる.巨赤芽球性貧血はそれほど多い疾患でなく全貧血症例の5%以下である.この貧血は通常治療に対して見事な反応を示す.
 本症は今から約150年前にCombeらが原因も治療も不明で極めて予後不良な悪性貧血として記載したのに始まる.その約30年後にはAddisonが本症と副腎の関係について考察し,その後Biermerが進行性悪性貧血の臨床像をまとめたが,この時代にはまだ血液の知識や検査が発達してなかったため,血液学的特徴をつかんでいない.約100年前にはEhrlichらが初めて大球性貧血,胃粘膜萎縮,神経症状などを悪性貧血の特徴として捕らえた.骨髄内には巨大な赤芽球系細胞(これを巨赤芽球と命名した)を認め巨赤芽球性貧血と言う言葉が用いられるようになった.当時より悪性貧血の原因に食事性の因子が推定されていたが,いかなる治療をほどこしても思うほど良好な効果が得られなかった.約50年前にボストンのMinotとMurphyらが本症に生の肝臓を投与し,画期的な治療効果を得てノーベル賞の対象となった.その数年後にはCastleが本症における胃液と肝臓食療法との関係を明らかにし,その成因が内因子(正常人胃液中にある)及び外因子(食物因子)からなる抗悪性貧血因子の欠乏という仮説を提唱した.一方,これらの研究と併行してMitchellらは35年前に菠穫草から他の造血因子,葉酸の抽出に成功している.この間肝臓内抗悪性貧血物質(外因子)の分離に目が向けられ続け,30年前に初めてRickesとSmithらが肝臓から微量で臨床的に有効な赤色のビタミンの結晶を取り出すことに成功し,それをビタミンB12(B12)と呼ぶようになった.

技術講座 血液

プロトロンビン時間とトロンボテスト

著者: 田原口経貞

ページ範囲:P.292 - P.298

 プロトロンビン時間
 1935年Quickによって発表されたプロトロンビン時間(以下PT)の測定は,部分トロンボプラスチン時間とともに出血性素因検査のスクリーニングテストとして欠くことのできない重要な検査である.その意義は,外因性(組織性)・凝血機序に関与する因子活性の消長を全体的に測定することにある.すなわち,PTの延長はプロトロンビン(第II因子)の減少以外に第V,第VII,第X因子,フィブリノゲンなどの減少などの際にみられ,ほかにヘパリン様物質(抗トロンビン)の存在するときにも延長する.これらの因子は先天性では通常単独で減少するが,後天性の場合は二つまたはそれ以上の因子が同時に減少することが多い.
 本測定法としては一般にQuick一段法が用いられ,その延長が認められる際は更に二段測定法が行われる.これらが凝固活性を測定するのに対し,近年凝固タンパクとしての定量を行う方法として免疫学的測定法が行われており,免疫拡散法,あるいは免疫電気泳動法(Laurell法)が用いられ凝固活性の食い違いにより発見された凝固タンパク異常などが報告されるようになった.ここでは我々が日常行っているプロトロンビン時間用手法を中心に述べる.

細菌

Aeromonasの分離と同定

著者: 猿渡勝彦

ページ範囲:P.299 - P.305

 各種臨床材料から検出されるブドウ糖発酵性のグラム陰性杆菌は腸内細菌が大半を占めるが,それ以外の菌種もまれならず検出される.Aeromonasもブドウ糖発酵性の菌種ではあるが,腸内細菌には属さず,本来水生菌で魚及び両棲類の病原菌として知られていた.ヒトに対する病原性は1954年Hillらによる敗血症例の報告以来現在までヒトのその他の感染症例からの分離も含め,かなりの報告がなされている.
 本菌は,しばしばE. coli,Enterobacter cloacaeと誤られて同定されやすく,また本菌属の細部については分類学的になお多くの論議がなされているが,本稿では,Bergey's Manual第8版(Schubert)14)の分類に従い種及び亜種について述べるが,その中のAeromonas salmonicidaはAeromonas属と多くの性状を異にするので,これをNecromonas salmonicidaとしたSmithの分類15)を支持し,この菌種をAeromonas属から除外し,検査法を主体にAeromonas属菌に考察を加え記載する.

一般

薬尿

著者: 林康之

ページ範囲:P.306 - P.311

 与えられたテーマは薬尿という言葉で,医学用語としても全く新しく,なんとなく使われ始めたものと言ってよいであろう.このような医学用語はいずれその意味するところが明確に定義付けされなければならないし,このまま放置すると本来の意味とかけ離れた言葉の使い方をされるようになり混乱のもとになることが多い.特に臨床検査や病態を表現する用語は技術的な進歩発展の速い分野であり,絶えず正確な意味を現すこと,つまり永久に変わらない定義付けというのは難しい.しかし,その時点での定義を明らかにしておかなければ論旨は明確さを欠くことになるので,一応の定義付けをしたうえで薬尿について検査する立場から説明する.
 まず,"薬尿とは投与された薬剤及びその代謝産物のいずれか,もしくは両者を含有する尿"と定義することにする.ではここで言う薬剤とは何かというと,要するに薬効を期待して治療の目的で患者に投与された薬剤である.この場合,薬剤とは言っても我々の体内に常在成分として必要なもの,あるいは体内に入ってから常在成分に変わるものも当然含まれる.例えばしばしば用いられる薬剤としてブドウ糖,生理食塩水,各種のホルモンなども薬効を期待して投与されるのであり薬剤となるわけである.また薬剤の中には生体内成分としては全く存在しないか,存在しうるが直ちにほかの物質に転換してしまうものもある.例えば多くの化学療法剤は我々は常在成分として持ち合わせていない.また体内アルミニウム,ブロムなどは極めて微量に存在するが薬剤として利用する場合はかなり大量に投与される.そして,このような薬剤が尿中に混入することによって,臨床検査が妨害されたり,結果が修飾されたりすることが分かってきてにわかに"薬尿"が問題になり始めたのである.以下薬尿の成立する過程,薬尿による検査の妨害事例を述べ臨床検査と薬尿について紹介する.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

臨床化学分析における界面活性剤の利用

著者: 桑克彦

ページ範囲:P.279 - P.287

 臨床化学分析における界面活性剤の利用は,主に自動分析用の大部分の試薬に認められる.特にオートアナライザーのフロー系を良好に保つために用いられているものをはじめ,ディスクリート型のものにも添加されている.また界面活性剤を適確に利用し,吸収スペクトルを変化させたり,呈色感度を上げたりなど反応の組み立てに重要な役割を演じているものもある.そこで臨床化学分析に利用されているこれら界面活性剤についてその作用を考えてみよう.
 界面活性剤1,2)(surface active agent or surfactant)は構造的に一定の大きさの親水基と疎水基(親油基),あるいは極性基と無極性基と言われる性質の異なるものが適当にバランスして界面活性剤の分子を構成している両溶媒性物質の一つで,このためにいわゆる界面活性を示し吸着,配向,ミセル形成などの基礎的性質に基づいて,湿潤,起泡,分散,可溶化,洗浄,潤滑などの効果を発揮する.図1に界面活性剤分子の模型図を示した.また表1に親水基と疎水基の例を示した.

検査血清の不活性化の意義

著者: 秋山恒子 ,   鈴田達男

ページ範囲:P.288 - P.291

 補体の免疫反応に及ぼす影響と役割
 血清学的検査においては,往々にして血清中に抗体(または抗原)だけしか含まれていないかのように錯覚する場合がある.しかし周知のように血清は非常に複雑な組成を持っており,その中のタンパク成分で既に知られているだけでも約70種類もあり,抗体活性を担う免疫グロブリンは総タンパクの約1/4を占めるに過ぎない.その中の抗体活性をいろいろな方法で検出ないし定量するわけであるが,これは抗原抗体反応が非常に大きな特異性を持っているために,条件が適当であれば他の成分の影響はほとんど無視しうるためである.しかし同じ免疫反応に関与するタンパクである補体系は別で,これは免疫付着反応,溶解反応などのように免疫反応を増強する作用を持つ反面,沈降反応や凝集反応などの"目に見える反応"を抑制する性質を持っているからである.これは一見矛盾した作用のようにみえるが実はそうではない.生体中で大きな沈降物ができるのは余り望ましいことではなく,むしろ後でその処理に手を焼く結果となる.大きな沈降物が形成されるほうが良いと考えているのは検査をする人間の得手勝手なひとりよがりと言えるかもしれない.抗原と抗体との複合体は最終的には貪食細胞によって取り込まれ,他の適当な場所に運ばれて処理されるが,その際に細胞が食えないほど大きな塊では困るわけである.ところが補体の存在下で抗原抗体反応を行わせると,周知のように補体は直接抗原または抗体とは結合しないが,抗原抗体複合体ができるとそれに結合する.もちろん複合体同士がお互いに結合する反応も同時に起こるが,補体とちょうど競り合って結合する形となるために,それほど大きな分子になりえない.抗原と抗体のみが反応する場合には抗原が著しく過剰であると溶解性の複合体が形成され,みかけ上沈降反応が抑制される.補体の存在下での沈降反応あるいは凝集反応の抑制もこれと全く同じで,抗原抗体反応そのものを抑制するのではなく,格子の形成を抑制しているわけである.その証拠にすべての沈降物を10,000rpm以上の高速遠心で沈降させ,窒素量の測定を行うと補体の存在下のほうが補体の結合した量だけ窒素量は多くなる.
 もっとも補体の存在はこのように抑制的に働くばかりではなく,補体依存性混合凝集反応と言い,お互いに交差反応を示さない二つの抗原抗体系に属する複合物は補体がなければ当然結合しないが,補体の存在下で反応させるとそれを仲介として互いに結合するために大きな凝集塊を形成するようになる1).このように補体が抗原抗体反応系に影響を与えることは何も事新しい事実ではなく,既に30年以上も前から分かっていたことなので昔から血清学的検査は必ず不活性化した後に行うことになっていた.しかし最近簡易検査の普及によって万事がインスタント化され,必要な操作までもとかく省略しがちな傾向にあることは由々しいことである.

読んでみませんか英文論文

火傷患者の傷口及び血液からのVibrio alginolyticusの分離

著者: 角尾道夫 ,   ,  

ページ範囲:P.312 - P.314

 症例報告:1973年11月5日,全体表面の67.5%以上に2〜3度の火傷を受けて,37歳の白人女性が,米陸軍外科研究所に入院した.46%は第3度と推定され,全体表面に及び,手,足は大部分第3度である.火傷は,1973年11月4日,フロリダ,キーウェスト海岸のボートで,船内エンジンに給油中に,ガソリン気体に引火して起こった.患者は当初,爆発で転倒し,燃えているボートから救出され,炎を消すために海水につけられた.患者は火傷後2時間以内にキーウェスト空軍基地病院に運ばれ,直ちに蘇生術が開始された.その日しばらくして,外科研究所の火傷チームが到着し患者は検討され,救急機で外科研究所に運ばれた.彼女は集中治療室に入れられ,重体と記載された.重症の火傷に伴う多くの合併症が発生し,合併症が認められると治療が行われた.熱心な治療努力にかかわらず,彼女の心臓は停止し,1973年11月9日息を引き取った.

マスターしよう基本操作

免疫電気泳動

著者: 河合忠 ,   村上紀子 ,   山岸安子

ページ範囲:P.315 - P.322

 試薬 ①バルビタール緩衝液pH8.6,イオン強度μ=0.05),②粉末精製寒天,③寒天ゲル染色液(アミドブラック10B,酢酸ナトリウム,酢酸),④脱色液(5%酢酸溶液),⑤抗血清,生理食塩水.
器具 泳動装置(⑥定電圧定電流装置と⑦泳動箱),⑧浴槽,⑨三脚,ガスバーナー,⑩染色用バット,脱色用バット,⑪ガラス板(9cm×12cm×0.1cm),⑫水平台,⑬水準器,⑭溝切り用ナイフ(寒天ゲルカッター),⑮ものさし,⑯金属チューブ,吸口,湿潤箱,絵筆,マイクロピペット,つけペン,メスピペット,その他.

私の学校

銀杏学園短期大学衛生技術科—九州唯一の私立短大

著者: 成松隆一

ページ範囲:P.325 - P.325

 本学は森の都熊本市から国道3号線を北へ15分ほど車で行った緑の木々に囲まれた小高い丘の上に位置し,東に阿蘇の山々を望むことができます.
 1959年(昭和34年)に,熊本医学技術専門学校が発足し,それを母体として,1968年に,銀杏学園短期大学(2年制)となり,1973年より3年制の短期大学として,現在に至っています.本学を卒業すると,臨床検査技師国家試験受験資格を与えられます.

文豪と死

横光利一

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.326 - P.326

 横光利一(1898〜1947)は福島県生まれの小説家で,川端康成と並称される新感覚派の担い手であった.
 新感覚派にあっても,そうであったが文壇においても横光・川端と並称された.そしてその順序は,あくまでも横光・川端であり,川端・横光という順序ではなかった.

最近の検査技術

ベンチジンを用いないペルオキシダーゼ反応

著者: 小松英昭 ,   古沢新平 ,   佐藤正枝

ページ範囲:P.327 - P.333

 血液学領域で行われる特殊染色のうちで,最も歴史の古いペルオキシダーゼ染色は,急性白血病の病型鑑別などに用いられ,その臨床的重要性は今日においてもほとんど変わっていない.本染色の基質としてベンチジンを用いる方法は,操作の簡便性や結果の安定性などのため,当初から主流を占めてきたが,近年大量のベンチジンを扱う工場労働者に膀胱癌の発生をみるなど,その発癌性が明らかになったため,1973年ごろより世界的に製造及び販売が禁止されるに至った.現在我が国では,昭和47年10月発令の労働安全衛生法により,その製造及び使用は労働大臣の定める基準に従う場合に限定されたため,日常的な使用は著しく困難となっていることは周知のことである.そのため,ベンチジンを使用しないペルオキシダーゼ染色法への転換が迫られているわけであるが,ベンチジンの製造が禁止される少し前から,タイミングよく稲垣ら1)はフルオレン誘導体を基質としたペルオキシダーゼ染色法を開発し,以後それに種々の改良が加えられているほか,最近になって表に示すような各種の基質を用いた方法が相次いで報告されており,ベンチジンなきあとも全く心配はないようである.
 先日,文部省主催の国公私立大学病院臨床検査技術者研修会の際に,研修者の病院において現在行っているペルオキシダーゼ染色の方法を尋ねたところ,大部分の病院が依然として手持ちのベンチジンを用いていることを知ったが,その手持ちがなくなるとともにベンチジンを用いない方法へ移行せざるを得ないわけで,以下それらの方法の現況を解説し,各検査室における今後の検討の一助としていただければ幸いである.

知っておきたい検査機器

CPC装置

著者: 川越裕也

ページ範囲:P.334 - P.339

 CPC(coil planet centrifuge)装置は日本で開発された赤血球抵抗試験の半自動機種であり1),コイル状細管内に浸透圧勾配をつけた塩類溶液を満たしたものに少量の血液をチャージし,公転自転を行う独特の遠心器によりしだいに低張側に血球を自動的に送り溶血させ,その溶血パターンより赤血球脆弱性を判定させようとするものである.この装置による赤血球抵抗試験には浸透圧抵抗性のほかに機械的抵抗性も関与し,独特の溶血曲線が得られ,赤血球膜の性状を反映することからこの検査法を赤血球膜物性検査とも呼んでいる.本装置はコイルチューブを惑星(planet)のごとく公転自転させる遠心器を本体とするためcoil planet centrifuge(CPC)と名付けられ,本体のほかに溶血パターンを記録する走査型光電比色計,コィルチューブに浸透圧勾配をつけた塩類溶液を半自動的に満たすグラジェンター,コイルチューブを封ずるコイルプレッシャー及びチューブの温度を調整するインキュベーターの5つの部分から成っている(図1).これらの個々の装置について原理とその操作法を実際に測定する順序に従って紹介する.

おかしな検査データ

コリンエステラーゼ—検査室でのミステリー

著者: 大場康寛

ページ範囲:P.340 - P.341

 順調にプロットされていたm-nitrophenol法1)のコリンエステラーゼのコントロールチャートが,ある日,突然地震計の記録のように大きく振動した,直ちに担当者が試薬,標準液,室温,採光の変動,比色計の不調,操作上のミスなど考えられる諸因子を,つぶさに洗っていったことは言うまでもない.しかし,どうしても原因がつかめないままに約1週間たって,そして何もなかったかのように平静にもどった.
 1か月後,再び同じ現象に遭遇した.このときもいろいろ手を尽くしたが,原因は解明できなかった.それから数か月過ぎた.またもや出現である.多くの知恵を集めて検討したがお手上げとなり,ついに"この部屋,きっと雰囲気が悪いのよ!"などとあきらめにも似た冗談が飛び出す始末である.

検査の苦労ばなし

二つの発見への道

著者: 中橋勇次郎

ページ範囲:P.342 - P.343

 私は,海軍及び国立病院の臨床検査部門を40有余年歩いてきましたが,この道程は決して平坦ではありませんでした.この間,多少研究的業務にも従事苦労もありましたが,次の二つの発見を体験することができました.
 (1)蚊の新種発見
 Aedes (Finlaya) nippononiveus Sasa et Nakahashi, 1952.

コーヒーブレイク

法(のり)の月(つき)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.278 - P.278

 私は昭和33年,国立東京第一病院に赴任してから本格的に俳句の勉強を始めた.私の俳名を法月(ほうげつ)と言うがこれは学生時代につけたのである.当時昭和20年の終戦のころで,私たちは山形県鶴岡市に大学疎開をしていた.自己流で俳句を作っていたが,どうせ作るなら号をつけて発表しようと考えていたとき,友人二,三人と羽黒山に登った.名だたる東北の名山で,山頂の神社までは何百段と石段がある.周囲は昼なお暗いうっそうたる千年杉の大木である,山伏の吹くホラ貝が時々聞こえる.石段は苔むして,徳利や猪口の彫刻がある.しばらく登ると右手の杉の木の下に石碑があり,句が彫り込んである.
 なんとかで 千年の杉や 法の月 上五は忘れたが確かにその下に千年の杉や法の月と書いてある.作者の名もあったがそれほど有名な人でない.以来私は金子法月と号して句会に出た.

存命(ぞんめい)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.333 - P.333

 去年10月24日から第24回日本臨床病理学会が福岡良男総会長の下,仙台で開催された.仙台の近くに多賀城址があり,以前から名前のみは聞いていた.エゾあたりの来襲に備えるお城かと思ったら,そうではなくて東北地方を治めた奈良時代の役所なのである.私が学会の合間に訪ねたのは25日の夕方である.建物は何もないが周囲にわずかに土塁がある.一見荒涼たる景色である.それでも土塁と秋雲の取り合わせが綺麗だった.
 多賀城の土塁に暮るる赤とんぼ

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医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.323 - P.324

702)単核症;
伝染性単核症infectious mononucleosis.→640)腺熱

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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