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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術7巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

卵巣腫瘍

著者: 細川勉 ,   大須賀啓暢

ページ範囲:P.6 - P.11

 卵巣には多種多様の腫瘤形成が生ずるが,大きく次の二種に分類されている.
 A.類腫瘍あるいは貯留嚢胞—卵巣嚢胞

技術講座 生化学

血糖の定量法

著者: 男沢聖子

ページ範囲:P.28 - P.33

 血液中に存在する糖類を血糖と言い,普通ブドウ糖が主成分であるため血糖と血中ブドウ糖は同じ意味にとられ,また血糖が食餌及び肝臓・筋肉中のグリコゲンに由来することは糖質の代謝で知られる.血液中の糖はCraude Bernard(1860年)により発見され,生理的意義づけが行われたが臨床的に意義が高められたのは臨床的に使用できる血糖の測定法をBang(1913年)が確立してからである.そして原理的に異なる測定法が次から次へと数多く開発され現在に至っている.血糖測定は臨床化学分野で歴史的に古く多くの変遷を経て著しい発展を遂げている.初期のころの測定手段としては重量測定法そして滴定法〜比色法〜自動分析法となり,測定形式も沈殿法〜還元法〜縮合法〜酵素法となった,また測定操作段階も3段階以上〜2段階〜1段階(直接法)となり,試料量も大量〜超微量と変化した.現在検査件数の最も多い項目の一つに数えられている血糖検査は糖尿病の診断,糖尿病のコントロールの適否のチェックなどに有力な手段として実施されている一方,低血糖症の発見,各種内分泌疾患の診断にも広く実施されて欠くことのできない検査である.したがって血糖の定量法は特異性,高感度,高精度,迅速性,簡易性,微量化そして多数検体処理能力の諸条件を満たすことのできる定量法が要求されていることは明白で,最近ではRefractance Meter,Dexter(Ames),Refromat(Böhringer Mannheim/BMY),Polamat S(Carl-Zeiss/日綿実業),Glucose Analyzer 2(Beckmann),YSI Glucose Analyzer(YSI/日科機),グルコライザー(第一科学/Ames/マイルス三共),Biostator Gluccse Analyzer(Miles Lab),グルコローダーS(シノテスト)などの測定機器が開発市販されているのが現状である.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

血清膠質反応

著者: 畑下敏行

ページ範囲:P.12 - P.18

 Heepe1)は,現在までに発表された血清膠質反応の数は,250以上に及ぶものがあると記しているが,今日,日常の検査に用いられているものは,それほど多くなく,また自動化することが困難なものが多いため,多忙な日常のルーチン検査から,はじき飛ばされてしまったのが現状のようである.しかし多くの研究者によって,臨床検査として極めて有用なものとして,築き上げられてきたこれら多くの血清膠質反応に関する知識は,もはやさほど重要ではないと考えることは間違っていると信ずるものである.血清膠質反応の中には,その成績が,ほかの検査成績からではほとんど得られない情報を与えてくれるものも多く,極めて有用なものであり,我々はそれらに対して正しい知識を持ったうえで,これらの検査の取捨選択を行うべきであると考えるものである.
 血清中には多種の蛋白が含まれており,分子量,等電点などにおいて固有のものを持ち,単純蛋白あり,複合蛋白あり,配合簇としては,糖質あり,各種の脂質あり,またその量比も様々であり,その各々が多様な膠質安定性を持っている.あるものは膠質安定性が極あて高く,ほかに不安定なものの保護膠質として,全体的な安定状態の保持にも大いに役立っている蛋白や,逆にその病的増加によって全体的安定性を極度に低下させる蛋白など,種々なものの集合体である。しかし健康者の血清においては,十分な量の保護膠質の存在により,極めて高い膠質安定性を保持しており,各種の蛋白沈殿性薬剤に対しても,そう容易に沈殿や混濁を生じない状態を保っている.

残気量の測定

著者: 遠藤和彦

ページ範囲:P.19 - P.23

 肺気量分画のうち,残気量と残気量を含む肺気量(機能的残気量,全肺気量)とは,スパイロメトリーでは測定できない.一般には機能的残気量を測定し,これから予備呼気量を差し引いて残気量を求め,更に肺活量を加えて全肺気量を求める.種々の測定法が試みられているが,主なものは下記のとおりである.

血清中の補体活性と蛋白量

著者: 近藤元治 ,   竹村周平

ページ範囲:P.24 - P.27

 抗生物質の発見されるまで,人類の死因の第一位は感染症であった.このため,感染(疫)から免れる手段として研究されたのが免疫学である.細菌感染に際して,血中には抗体が産生され,それに血中に存在する補体(complement)が加わると,細菌は溶解され,あるいは白血球やマクロファージにより貪食される.このように,補体は抗体とともに,感染防御機構の担い手として注目されるようになった.
 最近では,臨床的に自己免疫疾患,感染症,悪性腫瘍,DIC(血管内凝固症候群)など広範囲にわたって,補体測定の必要性が叫ばれているが,何となく補体になじみにくい人が多いようである,この補体に対するアレルギーは,補体系が9種の成分といくつかのコントロール物質から成り,また活性化系路が単一でないばかりか,活性化を受けると血中補体価が低下するという,他の酵素には見られない変化をとることに原因するようである.しかし,現実に補体測定に対するニードが高まっている以上,捕体の測定理論と異常値に対する正しい解釈を知らねばならない.以下に補体測定の問題点を述べてみる.

最近の検査技術

生体材料からの抗てんかん剤の測定

著者: 仁科甫啓

ページ範囲:P.34 - P.40

 現医療下における薬物療法が重要な役割を果たしていることは改めて論ずるまでもないが,その反面,薬害としての副作用も大きな社会問題として浮き彫りにされ,薬物の有効性と安全性をめぐって,科学的な基盤に立っての投与方法の検討が要求されてきている.とりわけ,抗てんかん剤や抗うつ剤のような長期間投与で,かつ,有効量と中毒量の幅が狭い薬物では合理的な投与計画の設定が不可欠となる.この合理的な投与計画を実施するためには薬物の薬理的作用,更に体内中での代謝機構を理解するとともに,体内での分布,特に正確な血中濃度の把握が必要となる.
 そこで,最近注目されてきている生体材料から抗てんかん剤の検出とその濃度測定について,二,三の解説を試みる.

知っておきたい検査機器

多項目自動血球計数器

著者: 新谷和夫

ページ範囲:P.41 - P.44

 自動血球計数器が国内で使用されるようになって20年になろうとするが,その間に赤血球,白血球を切り替えて測定する基本型からヘモグロビン,ヘマトクリット,ウイントローブ恒数も併せて同時に測定する多項目型へと発展し今日ではこれが主力機器として多くの検査室で使用されるようになっている.今回は多項目型自動血球計数器のうち国内で実績の多い3機種について解説する.扱うのはコールターS,ヘマログ-8,東亜-710型であるがC-S,H-8,710の略号を使用する.

マスターしよう基本操作

包埋センターの使い方—パラフィン包埋法

著者: 山田邦雄 ,   三友善夫

ページ範囲:P.45 - P.52

 近年,病理形態学的検査も検査数の増加に加えて,組織化学,電顕,染色体などの特殊な検査も求められ,限られた定員内で大量の病理組織標本を正確にしかも迅速に作製するためには,標本作製と保存の能率化が必要となっている.他の検査が機械化されている中で,病理検査が百年一日のように,紙片に糸と針で組織片をつなぎ,木片に貼付し,番号を書き,紙箱に詰めている手内職的な操作を続けているわけにはいかない.
 ティシューテックシステム(Tissue Tek System)は病理組織標本作製の固定から保存までの各操作過程をシステム化して,均一なパラフィン包埋ブロックを能率的,経済的,かつ簡単に組織標本の作製ができるように工夫された機器である.このティシューテックシステムの中で包埋センターを中心として,手術材料を例に切り出しから薄切パラフィン包埋ブロックの保存までの過程を呈示した.特に保存も薄切を終了したパラフィンブロックはファイリングキャビネットに番号順に整然と並べられ,再検査や研究時にいつでも自由に取り出して使用できるように大量のブロックの整理保管が可能である.

読んでみませんか英文雑誌

臨床検査室におけるγ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)(測定)のカイネティック用手法の適用

著者: 野本昭三 ,   ,  

ページ範囲:P.57 - P.59

 我々は臨床化学検査室に分析法を導入設定する際の手法を提唱してきた.それをγ-GTP測定のカイネティックによる迅速簡易な用手法に応用して,我々の検査室の実状に合うようにした.

おかしな検査データ

アルカリホスファターゼ活性の著しい低値

著者: 富田仁

ページ範囲:P.60 - P.61

 日常診療でアルカリホスファターゼ活性(ALP)が低値を示す場合は,甲状腺機能低下症か,本態性というか先天性というのか体質的な低ALP血症であり,症例数から言えばそんなに多いものではない.それ以外は,検体の取り扱いの問違いにあることが多い.EDTA入り血漿が,提出された場合にはALPは低値というよりも0である.これについては本誌でも過去に2回取り上げられており1,2),ALPの酵素活性を賦活するMgイオンがEDTAによって除去されるからであると説明されている(著者はMgイオンが除去されて活性が0になるという考えを否定するものではないが,EDTA血漿でALPがいつでも0になるのはおかしい.時には低値を示す場合があってもよいのではないかと考え,ALPという酵素を調べてみるとZnを含んだ金属酵素であるということを知った3),そこでEDTA加血漿のALP活性がいつでも0ということは,賦活剤としてのMgイオン除去のほかに,ALP酵素そのものが阻害されていると考えたほうがよいのではないかと考えている).このようにEDTA加血漿でのALP活性は低値というよりも0と言ったほうがよく,その疑いがあった場合には同じ材料についてCaを定量すれば0であるので,すぐに気がつく.
 今回は,EDTA入り血漿でもなく,甲状腺機能低下症でもないのに,ALP活性が著しい低値を示した症例を経験した.SMA12/60でのALP正常値は30〜85mU/mlであるが,本患者は7であった.これをKA単位(正常値4〜12)に換算すれば,約0.9KA単位であると考えられる.

広がる技師の職場

横浜検疫所

著者: 馬渡彰

ページ範囲:P.62 - P.63

 検疫所では,世界保健機関を通じて各国と検疫伝染病"コレラ,ペスト,痘そう,黄熱"や世界保健機関の監視下におかれている,インフルエンザ,回帰熱,急性灰白髄炎,発疹チフス,マラリアなどの伝染病の発生情報の収集,交換を行っており,国際的視野のもとに他国からの伝染病侵入を防止している.しかし,いまだ東南アジア地域などの発展途上国には,多くの伝染病が蔓延しており,航空機の発達によって短時間で汚染地を経由して我が国に入国する渡航者が増大している現在,感染後発病前の状態で入国しようとする者を完全に阻止することは不可能であると考える.なお,検疫を厳重に行わねばならないことは,自明の理であるが,その反面,海外交流及び通商貿易を阻害する恐れがあり,検疫を実施するに当たって極めて困難な状況にあると言える.
 次に検疫とは,検疫伝染病が外国から来る船舶や航空機によって我が国に侵入することを未然に防ぎ,国民の健康な生活を守ることであるが,このほか,植物や動物については植物防疫所ならびに動物検疫所でそれぞれ別に検疫が行われている.検疫業務について簡単に述べると,外国から我が国に来る船舶や航空機に対し検疫伝染病の侵入を防止するため,海港,空港ごとに一定の区域を定めて,そこで検疫を行うほか,船舶や航空機の乗客及び乗組員に必要な予防接種を行ったり,船内や機内の衛生検査や消毒及び虫類やネズミ族の駆除を行っている.なお,港や飛行場及びその周辺の衛生状態などを把握するため,陸上の建物や施設などのネズミ族,虫類の調査のほかに,飲料水や海水などを定期的に検査し必要に応じてネズミ族と虫類の駆除,または港湾関係者の健康指導なども行っている.以上のほかに,海外旅行者に対する予防接種の実施ならびに国際予防接種証明書に認証印の押印も行っている.

トピックス

第10回日本臨床検査自動化研究会から

著者: 山中學

ページ範囲:P.56 - P.56

 去る8月31,31日,9月1日の3日間,東京の経団連会館ホールで,第10回日本臨床検査自動化研究会が,都立産業会館大手町館での機械展示会を併せ開催され,多数の参会者を得て盛大裡に終了した.
 会長は,この会の創立者である関東中央病院長樫田良精先生,副会長には,この会の運営を実質的に担当してこられた都立駒込病院副院長の茂手木皓喜先生であった.簡単にその印象を述べてみたい.

コーヒーブレイク

縁の話

著者:

ページ範囲:P.64 - P.64

 女性は一般に"縁"という言葉が好きです."縁があってこの方と結ばれた"とか,縁というものを常に気にしているように思われます."袖すり合うも他生の縁","縁は異なもの味なもの","つまづく石も縁のはし","合縁奇縁","縁起が良い","縁と浮き世は末を待て"など多くのことわざが日常生活に融け込んでいますが,"縁"の内容は何んとなく使っていてあいまいではありませんか?
 縁は仏教語(梵語)で,因と果の間を取りもつ言葉です.人間にもたらされたその状態は決して偶然のことではなく,すべて前世からの定め,すなわち,前世の善悪のために生じた業(ごう)によって生じる因が,この縁の助けで現世の果が生ずるというものです.つまり現世に良いことをすれば末世で良いことがあり,悪いことをすれば悪いことになるという因果応報の仲立ちをするのが縁というわけです.人の運の不思議さを思うと,現在のような無味乾燥した社会でもやはりこうした定めのようなものがあるように思われます.英語にも"君は我が運命"という歌があります.

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医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.53 - P.54

 881)白斑;vitiligo,leukodermia
皮膚の色素が脱失して肉眼的に白色の斑をつくっているもの.これを主な症状とする疾患として尋常性白斑(しろなまず→548),先天性白皮症(白子,しろこ)や,そのほか海水浴の後に生ずる海水浴後白斑,他疾患に伴って生ずる梅毒性白斑,らい性白斑などがある.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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