おかしな検査データ
アルカリホスファターゼ活性の著しい低値
著者:
富田仁
ページ範囲:P.60 - P.61
日常診療でアルカリホスファターゼ活性(ALP)が低値を示す場合は,甲状腺機能低下症か,本態性というか先天性というのか体質的な低ALP血症であり,症例数から言えばそんなに多いものではない.それ以外は,検体の取り扱いの問違いにあることが多い.EDTA入り血漿が,提出された場合にはALPは低値というよりも0である.これについては本誌でも過去に2回取り上げられており1,2),ALPの酵素活性を賦活するMgイオンがEDTAによって除去されるからであると説明されている(著者はMgイオンが除去されて活性が0になるという考えを否定するものではないが,EDTA血漿でALPがいつでも0になるのはおかしい.時には低値を示す場合があってもよいのではないかと考え,ALPという酵素を調べてみるとZnを含んだ金属酵素であるということを知った3),そこでEDTA加血漿のALP活性がいつでも0ということは,賦活剤としてのMgイオン除去のほかに,ALP酵素そのものが阻害されていると考えたほうがよいのではないかと考えている).このようにEDTA加血漿でのALP活性は低値というよりも0と言ったほうがよく,その疑いがあった場合には同じ材料についてCaを定量すれば0であるので,すぐに気がつく.
今回は,EDTA入り血漿でもなく,甲状腺機能低下症でもないのに,ALP活性が著しい低値を示した症例を経験した.SMA12/60でのALP正常値は30〜85mU/mlであるが,本患者は7であった.これをKA単位(正常値4〜12)に換算すれば,約0.9KA単位であると考えられる.