コーヒーブレイク
有名ブランド病
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ページ範囲:P.220 - P.220
昨年暮に日本でも1,2を争う有名デパートが,その店の直輸入品を銘うって,堂々と有名ブランドのネクタイを売り出した.ところがその特約店が調査したところ,似ても似つかぬ偽物と判明し,そのデパートは残部を切り刻んで処分したという.しかし古いのれんで,その包紙で品物を包んであるだけで信用してきた利用者にとっては,まさに驚きである.関係者として首脳部の人は自分は知らない,担当の係がやったとか弁解していたが,どんな理由にせよ,偽物を堂々直輸入と偽って(まさに二重の偽りを犯している).信用しきった客を騙した罪は重い.もちろんこの背後には我々日本人の舶来品崇拝という明治開国以来のインフェリオリティコンプレックスがあることは否めない.スポーツシャツやスカーフなどに染め出された外国の有名ブランドやデザイナーあるいは,有名プロ選手の名前を見せよがしに歩いている人たちを見ると,有名ブランド病は老いも若きも我々日本人に浸み込んでいるようだ.品質や柄で選ぶのではなく,ブランドが付いているだけで,値段も考えず買う人が多いという.それにつけ込んで,悪徳商人が偽物を作り,店の信用を利用して売りつける.確かに物によっては,歴史のある欧州物はすばらしいと思う.GNPも高く,外貨保有高も西ドイツと肩を並べても,我が国の庶民の生活は,貧しくはないにしても,決して豊かとは言えない.せめて男ならネクタイ,女性ならスカーフと有名ブランド品を身に付けて,生活を少しでも楽しもうとする心根はいじらしいが,その裏をかくような仕業はしてもらいたくない.
幸運にも,我々の職場で使われる多くの輸入品には,偽物はさすがにみられない.しかし外貨減らしなどで,思いがけない多数の高額検査機器が輸入されつつあるが,品質の点で十分な保証が必要である.殊に試薬類などで,指定され,かつ成分未公開のもので不良品があるからである.