測定法の基礎理論 なぜこうなるの?
ラジオイムノアッセイ
著者:
鳥塚莞爾
,
小西淳二
ページ範囲:P.287 - P.292
ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay;RIAと略称される)は1959年YalowとBersonによりインスリンの測定法として初めて開発された画期的な測定法である1).以来20年この方法はインスリンのほか種々のペプチドホルモンや非ペプチドホルモンの測定にも広く用いられ,内分泌学の著しい進歩をもたらしている.更に最近ではホルモン以外の蛋白や小分子物質の測定にも応用され,血清蛋白成分や種々の薬剤,酵素,ウイルス抗原,腫瘍抗原,環状ヌクレオチドなど広範囲に及んでいる2,3).このように多くの物質の測定に応用可能である点に本法の有用性があり,今後ともますますその測定対象は拡大されるであろう.このような本法の特性は抗体の持つ免疫学的特異性に基づいており,本法では放射性同位元素で標識した物質と標識されていない物質が,その物質に対する抗体に対し競合して反応する事実を利用している.その後抗体の代わりにホルモン(またはビタミンなど)と特異的に結合する蛋白を用いた競合的蛋白結合分析法(competitive protein binding assay;CPBA)が開発され,また抗体の代わりにホルモン受容体を用いる測定法も導入され,放射受容体測定法(radioreceptor assay;RRA)と呼ばれている.これらはいずれも一定の結合部位に対する放射性標識物質と非標識物質の競合反応を利用する測定法という点で原理的には同じであるので,今日では競合的放射アッセイ(competitive radioassay)と総称されている.したがってラジオイムノアッセイの原理を十分に理解することは,これら他のアッセイの理解にもつながるわけである.そこで以下本法の原理と特徴,その成立条件などとともに測定上の注意点などについて述べることとする.