最近の検査技術
心臓の超音波断層法
著者:
琴浦肇
,
高橋正明
,
河合忠一
ページ範囲:P.249 - P.259
心臓の超音波検査は現在心電図検査に匹敵する重要な検査として普及している.それは超音波検査が心臓の検査法として極めて優れた特徴を有するためである.超音波は音響抵抗(物質の密度と音速の積)の変化する界面での反射を利用しているので心臓のような軟部組織においても多くの情報を得ることができる.次に人体内の音速は高速(約1,500m/秒)であり,ごく短時間に情報を取り出すことができサンプル数を多数とることができるので速い動きも十分に表現することが可能である.また,ごく短時間(1マイクロ秒ぐらい)かつパルス状に繰り返し超音波を発射するだけで十分な情報が得られるので組織障害性がほとんどなく非観血的に繰り返し検査できる,などである.これらの特徴を生かしMモード心エコー法は既に多くの臨床応用がなされ,その地位を確固たるものとした1〜3).Mモード心エコー法は手軽に行える反面,エコー源が心臓のどの構造物からのものか不確定のことが多い.そのため心臓内の各構造物の相対的位置関係を知り,その特定部位をMモード法にて計測することが必要とされた.それには心臓を体表面から二次元表示する必要があり,我が国では田中らが超音波トモグラフィーとして開発してきた4).しかしながら,その実施には非常に熟練した技術と多くの時間を要する頻雑さから敬遠されがちであった.ところが最近のエレクトロニクスの発達により,ごく手軽に心断層図の得られる機器が相次いで開発されるに及び多くの施設に次々と設置されつつある.