免疫学的妊娠反応
著者:
高木繁夫
,
尾崎晴彦
ページ範囲:P.863 - P.866
尿中の胎盤絨毛性性腺刺激ホルモン(humanchorionic gonadotropin;HCG)を証明し,これを妊娠診断に応用しようとする試みはすでに1920年代より始められており,幼若マウスを用いるZondek-Aschheim法(1927年),ウサギを用いるFriedman法(1929年),雄カエルを用いるGalli-Mainini法(1934年)などが優れた方法として高く評価され,長く用いられてきた.しかしこれらはいずれも動物を使用するため,動物の飼育,判定時間,手技などの煩わしさから日常手軽に行える方法ではなく,一般小病院にとってはほとんど実施不可能であり,他の簡単な方法が待ち望まれていた.
一方,免疫化学の進歩により1956年にインスリンが,1959年に成長ホルモンがそれぞれ免疫化学的に測定し得ることが知られてから,HCGについてもその抗体産生能を利用して,免疫学的にこれを証明しようという試みがなされ,1960年代に至り,Wide及びGemzellがタンニン酸処理HCG感作ヒツジ赤血球凝集阻止反応,Brody及びCarlströmが補体結合反応,McKeenが沈降反応を相次いで報告したのがその始まりである.その後抗原吸着材として赤血球の代わりにpolystyrene latex粒子を用いるHCG感作ラテックス凝集阻止反応がRobbins(1962年)により開発され,更に最近では赤血球とかラテックス粒子に抗HCG抗体そのものを標識し尿中のHCGを直接凝集反応で検出する方法も考案され,現在では煩雑な生物学的妊娠反応に代って,手技が簡単でかつ迅速に実施できる免疫学的妊娠反応が外来のルーチン検査の一つとして広く利用されている.