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文献詳細

雑誌文献

臨床検査1巻7号

1957年10月発行

文献概要

『医学常識』

ポリオとそのワクチン

著者: 豊川行平1

所属機関: 1東京大学衛生学

ページ範囲:P.425 - P.427

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 ポリオ(小児麻痺)の病原体はウイルスで,これには現在免疫学的にはつきり区別される3つの型,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型のウイルスがある。感染は一般の消化器伝染病と同じく経口的にウイルスを摂取することによつて起るが,摂取されたウイルスがどこで増殖し,いかなる経路を通つて中枢神経系に到達するかという点についてはまだ議論があり,確定されていない。いずれにしても,ウイルスに感染して7〜21日(平均12日)の潜伏期をへて,発病する。つまり,四肢の麻痺が起る。その前に発熱その他の症状があるが,これはポリオ特有とはいえない症状で,麻痺が現われない限り,発熱その他の症状を呈している時期にポリオと診断することは殆んど不可能である。ただポリオが集団的に発生しているようなときには,麻痺の現われない時期にポリオらしいと考える場合があるが,こういう例はむしろ稀である。
 さて,ポリオの感染を受けると,必らず麻痺が現われるかというと,そうではなく,むしろ麻痺の現われる例の方が稀で,研究によると感染者数百人にわずか1人ぐらいしか麻痺が現われないといわれている。つまり,大部分は無症状感染を起しているのである。その点日本脳炎とよく似ているわけである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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