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入門講座 血清
免疫
著者: 松橋直1
所属機関: 1東大医学部血清学
ページ範囲:P.62 - P.62
文献購入ページに移動 ある伝染病に一度かかると,2度とおなじ病気にかからない,すなわち「2度なし」のことを免疫とよんでいる。たとえば,幼時に麻疹にかかると,その人は一生の間に2度と麻疹にかかることはない。耳下腺炎(オタフクカゼ)も同様であることは,われわれが身をもって体験しているところであろう。しかし,この例は,本人が病気にかかってしまい,運が悪いときは不幸な結果—死—になってしまう。軽いときでも相当に苦しまなければならない。この苦しみからまぬがれるために考えだされたのが,ジェンナーによって工夫された予防接種法である。有名な話であるから御存知のことであろうが,ジェンナーは,牛の痘瘡にかかったことのある乳しぼりの人は,人間の痘瘡にかからなくなることから思いつき,わが子を実験対象にえらんで牛痘をうえそれが害がなくかつ人間の痘瘡にかからなくなることを立証した。こうしてジェンナーによって創案された種痘法は,弱毒化した病原体を人間に接種することにより,人為的に伝染病の「2度なし」をつくることに成功し人類に多大な貢献をなした。その後19世紀の初め,パスツールによって狂犬病の予防接種法も成功している。
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