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文献詳細

雑誌文献

臨床検査11巻13号

1967年12月発行

文献概要

綜説

ファージ型別—疫学の一方法論

著者: 大橋誠1

所属機関: 1国立予防衛生研究所

ページ範囲:P.1017 - P.1026

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はじめに
 感染症の疫学的研究をする場合に,目的とする疾患の原因菌を明確に他の菌から区別して把握することは必須の条件である。病原細菌学の発祥はまさにこの認識に始まったと考えてよい。Koh,Pasteurの活躍を中心とした揺藍期ともいうべき19世紀の細菌学の大きな目標は,種々の病理所見,あるいは流行様相を呈する疾患にそれぞれ対応する細菌を発見し,それが原因菌であることを証明することであった。その後それぞれの病原細菌が詳細に研究されるようになって,いきおいそれらを対比類別しようとする方向へと学問は進展する。すなわち分類学としての発展の途である。
 また,生化学的な性質の解析の進歩に伴って,凝集反応,沈降反応などの免疫学的な方法論の開発によって,病原細菌をさらに明確に詳細に区分できるようになってきた。サルモネラ,赤痢菌,大腸菌など腸内細菌にせよ,肺炎双球菌,レンサ球菌にせよこのような方法による細分がなされている。しかしこれらの類別の作業はただ単に生物分類学としての興味からのみなされたのではない。同じ病理を示し,同じ流行形式をとる疾患をその病原体の性質の面からさらに区分し,この標識に従って該当疾患の流行についての認識を深めてゆこうとする意図があったはずである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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