icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査11巻7号

1967年07月発行

文献概要

カンボジアだよリ

偉大さと奇怪さクメール文化の遺跡—派遣検査技師の現地報告(3)

著者: 加藤哲

所属機関:

ページ範囲:P.508 - P.508

文献購入ページに移動
 カンボジア正月(チョーチナム)は四月です。今年は十三日から三日間です。正月といってもバナナの軸を輪切りにしたものや,砂盛りした器に切細工した色紙などをつけた棒を立て,線香をそなえたものが門口に作られる位で,その他特別変ったものは見られません。最も正月を特徴づけるものはこの間賭博行為が許されることでしよう。それから多くの人はアンコールへ参詣に出かけます。
 アンコール(王都の意味)の遺跡は600km2にわたって散在しており,1861年標本採集のためジャングルに入ったフランスの学者アンリムオは死の静寂に眠る石の大殿堂を見て蜃気楼ではないかと目をこすったそうですが,クメール文化の偉大さと怪奇さにはだれもが圧倒されてしまいます。その一つであるジャヤヴァルマン七世によって建てられた第四次王都アンコールトムは一辺3kmの正方形の中心にバイヨン廟(戦死者の霊をとむらう納骨堂)がありそそり立つ50の塔と172の顔が,モナリザのごときなぞの微笑をたたえ,異様な雰囲気をかもし出し,芸術的建築遺跡としてもまさしくトム(大きいという意味)でありましよう。このバイヨン廟の第一回廊の壁面にはほかと違って当時の庶民たちの生活がぎっしりとすばらしくレリーフされているのです。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?