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文献詳細

雑誌文献

臨床検査12巻4号

1968年04月発行

文献概要

技術解説

ブドウ球菌の臨床細菌学

著者: 横田健1

所属機関: 1山梨県立衛生研究所

ページ範囲:P.235 - P.242

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はじめに
 ブドウ球菌(staphylococci)の臨床細菌学は,この菌が普通の培地上で良く増殖することや,その特徴的な形態などから,一見きわめて容易なことのように考えられがちであるが,実際はこの分野における最もむずかしいものの一つであることを銘記しないと,思わぬ誤りを犯すことがある。ブドウ球菌の臨床細菌学が簡単でない理由として,第一にこの菌の分類学上の混乱,とくにミクロコッカス属との鑑別が困難な場合があることがあげられる。第二にブドウ球菌による疾患の多様性,すなわち,いわゆる"おでき"といわれる皮膚,粘膜の限局性化膿疾患から,肺炎,中耳炎,腎盂炎,リンパ腺炎等のやや広範囲にわたる炎症,さらに全身的な敗血症に至る迄,幅の広い感染症をひき起すことが,原因菌としてのブドウ球菌と,ある種の病気との関係を明らかにしようとするときにいろいろの問題をひきおこす。さらにある種のブドウ球菌による毒素型食中毒(enterotoxinfood-poisoning)もこの菌の病原性の多様性を示すものである。第三の問題点は,この菌が自然界に広く分布し,しかも,ヒトその他の動物の鼻腔および皮膚表面の常住菌であることである。すなわち,ある臨床材料からブドウ球菌が分離され,それが幸いに典型的な黄色ブドウ球菌の性質を示したとしても,必ずしもそれが,その病気の原因微生物と断定し得ない場合もありうるわけである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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