グラフ
病理組織のための電顕試料作製法Ⅰ—固定と包埋
著者:
三友善夫1
宮本博泰2
所属機関:
1東医歯大・病理
2東医歯大中央電顕室
ページ範囲:P.321 - P.328
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1932年に,電子顕微鏡がはじめて製作され,さらに1940年ごろから実用化への研究が進み,1948年にPcase&Bakerにより生物組織の観察が試みられ,その後,固定,脱水,包埋,超薄切の方法が開発され,医学生物学的試料作製法の基磯的技術が確立された.電顕も細包組織観察の重要な手段として,しだいに病理学の分野にも導入されて,病変発生の場としての細胞組織の微細構造の観察はもとより,微細構造レベルでの病変の把握に応用ざれている.電顕試料作製の技術は,従来の光顕試料作製と原理的には同じであるが,真空下で観察される電顕材料は光顕材料に比して試料が非常に薄く(0.1μ以下)小さいために,病変部位の選択把握ならびに,artefactと病変像の区別などの一般的生物試料とは異なる特異的な注意が必要である.光顕レベルで行なわれているオートラジオグラフィーや組織細胞化学的方法,螢光抗体法も電顕レベルでい可能である.病理組織の材料が反復再現を許さないものであれば,機に臨み,有用な試料作製を正確に行ない,疾患概念や本態の不詳な疾患の解明に役だてたい.日常病理組織の観察に用いられる最も一般的な方法を紹介する(薄切〜染色は次号う.カット写真はウイルス性心弁膜炎(矢印がウイルス).