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文献詳細

雑誌文献

臨床検査15巻13号

1971年12月発行

文献概要

総説

先天性代謝異常症

著者: 荒川雅男1 吉田稔男1

所属機関: 1東北大小児科

ページ範囲:P.1401 - P.1407

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はじめに
 今世紀初頭の1908年,Sir Archibald Garrodは,遺伝性疾患に対して1つの概念を発表した.それによるとすべての遺伝性疾患は,ある特殊な‘酵素(enzyme)’の異常による代謝障害によってひき起こされるものと考えた.当時この考えは人人に注目されなかったが,分子生物学のめざましい発展とともに,‘先天性代謝異常症(inborn errors of metabolism)’の概念のもとに脚光をあびるようになった.
 現在この概念は,酵素に限らずすべてのタンパクにも適用することができるが,彼は最初に次の4つの疾患をあげて説明している.それはアルカプトン尿症(alkaptonuria),白皮症(albinism)五単糖尿症(pentosuria),シスチン尿症(cystinuria)であり,現在はBeadle(1945年)の‘一遺伝子・一酵素説(one gene-one enzyme theory)’により説明が可能である.すなわち先天的な1つの遺伝子の異常が1つの酵素またはタンパクの異常をきたし,そのためにある疾患が発症するという考え方である.これは病気の原因を代謝レベルで解明しようとする,現代の医学の新しい方向をうみ出した最初の仕事として高く評価されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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