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文献詳細

雑誌文献

臨床検査16巻5号

1972年05月発行

文献概要

ひろば

心理的技術の効用

著者: 村田徳治郎1

所属機関: 1慈生会ベトレヘム病院臨床検査科

ページ範囲:P.528 - P.528

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 技師法の改正によって,われわれの職場は広がったことになる.つまり臨床の場で入院・外来の患者さんや被検者と直接検査を介して接する機会ができるようになったからだ.今まで私どもは,すでに採取されたところの体液なり排泄物の分析や測定にのみ能力を傾倒できたのであるが,新しい分野においては検者と被検者のヒューマンリレーションが測定に大きな影響となることが考えられる.特殊な測定はともかく,普通の臨床検査としての脳波,心電図,肺機能などにしろ,また採血にしても対象となる被検者の側を考慮してみる必要がなかろうか.同じ目的の検査でも,被検者の年齢,性別,性格,職業また教養の多寡によって臨機応変に接してゆかねばならないであろう.
 従来の教科書によると,検査に対する恐怖や心配によるマイナス点を除くために,被検者に検査の内容や目的を十分理解するよう話してやることもあるが,経験的にこの答は基本的なもので,多忙な臨床検査の場では多くは応用されがたい.被検者の条件や要因にもより一概に断定的なものではないが,高・幼年者には物柔らかく笑顔にて,肉体的労働者にはいささか高姿勢かつ無愛想に,知的職業者には検査機器のメカニズムやその臨床的応用,他の分野への応用などを雑談的に話している.これはできるかぎり短時間に被検者の不安や恐怖また心配を除き,リラックスした状態にするためと,検者の指示がスムーズに被検者に伝達され受けとめられるための操作である.ときにはジョークや相手の趣味に合わせてもよく,いわゆる世にいう相手を見て法をとけ方式である.そのために新たにこの分野で働くわれわれは,その職域において検者と被検者という立場に,自分を含めての心理的技術をなおざりにはできない.つまり技と心を一致せしめてこそ成り立つ技術,それが臨床検査技師の課題であるまいか.ご批評を乞う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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