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アニサキス症—特にその病理診断
著者: 吉村裕之1
所属機関: 1秋田大・寄生虫
ページ範囲:P.680 - P.681
文献購入ページに移動従来,消化管,ことに回腸末端部における非特異性限局性腸炎,回腸終末炎(Ileitis ter-minalis)またはクローン病(Crohn's disease)と呼称される腸壁の好酸球蜂窩織炎に関して,他方胃における同様の病理所見の本態についても多くの議論がなされてきたが,近年これに関して新しい話題として提供されたのがこのアニサキス症(anisakiasis)である.アニサキス(Anisakis)というのは海獣(クジラ,イルカ,アザラシなど)の胃に寄生する回虫の名称であり,その幼虫がヒトの消化管に穿入し,上記の病理組織学的所見を特徴とする寄生虫性肉芽腫症を呈するものである.その成因に関しては別に解説するが,ヒトがアニサキス幼虫を包蔵する種々の海魚(サバ,スケソワダラ,スルメイカ,アジなど)の生食に際して,幼虫がヒトの胃または腸壁につきささり,胃潰瘍,胃腫瘍,急性腹症などの臨床症状を発現するもので,その病理診断は好酸球肉芽組織内に断端としてみられる特有な幼虫形態の寄生虫学的診断に待たねばならない.
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