icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査17巻13号

1973年12月発行

文献概要

Senior Course 血清

B型ウイルス性肝炎と細胞性免疫

著者: 伊藤忠一1

所属機関: 1東北大病院・中検

ページ範囲:P.1653 - P.1653

文献購入ページに移動
 オーストラリア抗原(Au抗原)が,B型ウイルス性肝炎(B型肝炎)を引き起こす病原ウイルスときわめて密接に関係している粒子であることに疑をはさむ人はもはやいない.しかし,B型肝炎をAu抗原の感染症とする考え方に単純に首肯する人も少ない.なぜならば,Au抗原に自然に曝露された生体に起こる生物学的反応は個体によって千差万別であり,古典的なKochの3条件を満足するような一般的な感染症とは著しく様相が異なるからである.
 原則的に考えるとAu抗原に感染したあとに起こる病状の発現は,ウイルス側の肝細胞に対する病原性(ウイルスの量,株,伝染経路など)と宿主のもつ感染防禦反応との組み合わせによって規制されると考えられるが,①健康人キャリアーに対して肝細胞毒性でなかったAu抗原が,いったん別の人に輸注されると肝細胞毒性を示してくる.②B型肝炎患者の血液中Au抗原量は健康人キャリアーのそれよりむしろ低いことがある.などの理由から,Au抗原の肝細胞毒性はもしあったとしてもそう強いものではないと考えられる.したがって病状発現は宿主側の因子によって左右されるとする考え方が強い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?