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特集 ウイルス疾患の検査法 ウイルス検査技術
日本脳炎ウイルス
著者: 緒方隆幸1
所属機関: 1国立予研ウイルスリケッチア部
ページ範囲:P.1250 - P.1254
文献購入ページに移動 1967年以来日本脳炎の患者数は急激に減少しており,一方,日本脳炎流行予測事業の一環として行われている屠場豚の血清を指標とした血球凝集抑制抗体測定および採集蚊(主としてコガタアカイエカ)よりのウイルス分離成績などによっても,近年,日本脳炎ウイルスの撒布が異常に減少していることが,これを裏付けているように思われる.しかし,この状態から推測して日本から遠からず日本脳炎ウイルスが消滅してしまうと考えるのはまだ早計である.ヒトおよび感受性動物の免疫の動態,媒介蚊の急増,農薬の種類と使用状況,気象,環境の変化などの因子が偶然重なると,過去の歴史が物語っているような大流行が,またいつ発生するか分からないとみるのが妥当だと考える.したがって日本脳炎の診断も右記に掲げるいくつかの方法があるが,今後の流行に備えウイルス分離とその同定をはじめ,種々の検査手技を熟練しておく必要がある.また抗原や抗血清なども常備しておくことが肝要である.なお現在,血清学的検査の器材,設備がよくなり,また血清,抗原などの量も少なくてすみ,簡便でそのうえ迅速に検査ができるようになったので,検査室では専らこれに重点がおかれる傾向にあるが,患者材料からの病因ウイルスそのものを分離同定することができれば,診断として最も確実であるといえる.
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