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ウイルスのことば
Slow virus感染症
著者: 甲野礼作1
所属機関: 1国立予防衛生研究所
ページ範囲:P.1273 - P.1273
文献購入ページに移動 Slow virus感染症は一般に極めて長い潜伏期の後に,徐々に発病し,遷延する進行性経過をとり,予後の悪いウイルス感染症ということができる.これには2つの疾患群があり,第1群はクルー,クロイツフェルド・ヤコブ病(以上ヒト),スクレピー(ヒツジ),ミンク脳症(ミンク)の4疾患が属し,脳に海綿様変性を生ずるので海綿様変性脳症とも総称される.病原は微小で,感染性核酸そのものともいわれ,植物ウイルス学領域で知られているviroidかもしれないという.一切の免疫反応,炎症反応を欠いている.これに対して第2群は,既知のウイルスの持続性潜伏性感染を基盤とし,これに宿主の免疫反応がからみ合って生ずる疾患群である.亜急性硬化性全脳炎(SSPE)はその代表で,ハシカウイルスが原因であり,これに対する宿主の免疫亢進状態がある.一方,多巣性白質脳症は,SV40株のパポバウイルスを病原とし,宿主の免疫不全状態を基盤として起こる病気で,炎症反応を欠き,多巣性の脱髄巣が主病変となっている.いずれもまれな疾患である.
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