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文献詳細

雑誌文献

臨床検査20巻11号

1976年11月発行

文献概要

特集 臨床検査室マニュアル Ⅴ.検査データからみた疾患の特徴

悪性貧血,巨赤芽球性貧血—〔類〕アジソン貧血

著者: 天木一太1

所属機関: 1日大・第1内科

ページ範囲:P.1266 - P.1267

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1.概念
 細胞が正常の増殖,分化をし,成熟していくためは,ビタミンB12および葉酸が必要である.これらのいずれかが欠乏すると,細胞のDNA合成が障害され,増殖の盛んな血球,粘膜や神経の細胞に異常が起こる.特に変化の著しいのは血球で,赤血球造血は巨赤芽球性造血となり,高度の貧血がみられるようになるが,また顆粒球や血小板造血にもほぼ同様な変化がみられる.その代表的疾患が悪性貧血であり,この場合,胃の内因子分泌欠如のためB12の吸収が障害されるのである.すなわち本症では胃粘膜の萎縮のために胃液分泌が低下するが,胃の傍細胞から分泌されるCastleの内因子分泌も欠除する.食物中のB12は内因子と結合して,初めて腸で吸収されるため,内因子欠乏によりB12は吸収されず,体内に欠乏する.
 巨赤芽球性貧血では血液所見の他,粘膜が萎縮して舌はHunterの舌炎になり,また神経症状としては,知覚障害や歩行障害が起こる.胃の全摘出をされた患者でも,内因子は欠如し,B12は吸収されなくなり,数年後(主として肝)に貯蔵されているB12が消耗してしまうと,B12欠乏状態になり,無胃性巨赤芽球性貧血になる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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