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Senior Course 血液
血液染色 Ⅰ
著者: 黒川一郎1
所属機関: 1札幌医大中検部
ページ範囲:P.660 - P.661
文献購入ページに移動 日常の血液検査に用いられる色素の大半は芳香族化合物である.これを中心に色素の構造を考えてみると,まず,ベンゼン核に1個ないし数個の結合物を有したものを一括してクロモゲン(chromogen)と称している.この結合物自体はchromophoreと呼ばれ,一定の原子の集まりで—C=C—,=C=O,=C=S,=C=N,N=N,N=O,—NO2などが基本的なもので,クロモゲン自体の有する色調の種類に大きく関係する.しかし,クロモゲン自体に染色能力は乏しい.例えばベンゼン核に—NO2が3個付着した物質はトリニトロベンゼンで黄色を呈する.しかし染色能力はなく,血液標本にかけても染色させる力はない.クロモゲン(色素の前段階)といわれるゆえんであろう.しかしベンゼン核の1個のH+がOH—に置換するとピクリン酸となり染色性をもつようになる.OH—のようにクロモゲンを染色対象と結びつける化合物をauxochrome (助色団?)と呼ぶ.クロモゲンはこれによって色素としての機能が可能になり色の強さが増強される.一方,色素はその全体としてのイオン力によって3種に分類される.すなわち非イオン性,陰イオン性,陽イオン性色素である.イオン性色素という場合,色素のイオン力を決定する部分(colour impa-rting ion)はC6H5(ary1基)との複合化合物であり,色素全体のイオンカのバランスが陰性に傾けば陰性イオン,陽性だと陽性イオンである.
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