icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査20巻7号

1976年07月発行

文献概要

研究

蓄尿試料の尿糖値低下阻止に関する検討

著者: 岩村幸江1 郷ヒロ子1 近持由美子1 堀内聰1 菅野剛史2

所属機関: 1東京都済生会中央病院検査科 2慶大病院中検・臨床化学

ページ範囲:P.741 - P.744

文献購入ページに移動
はじめに
 尿糖の測定は,糖尿病の診断および治療の経過観察に古くから行われている.坪井1,2)は1905年に,採尿時刻により尿糖値の日内変動が大きいことを報告した.以後24時間蓄尿尿糖値の測定が,空腹時血糖測定とともに糖尿病による代謝異常の状態を知る指標として日常頻繁に用いられている.糖尿病患者は腎障害を伴いタンパク尿を合併するので,ブドウ糖の存在とともに細菌が繁殖しやすく,細菌により尿中ブドウ糖が消費される.したがって尿糖の測定は採尿後直ちに検査するのが原則となる.24時間蓄尿尿糖値の分析は,細菌の繁殖を抑える条件下で蓄尿し,それを試料として行われなければならない.現在この目的のためにトルエン3)が広く用いられ,当院でも入院患者の蓄尿に加えられていた.また当院の通院患者は検査前日の蓄尿を原則として持参することになっているので,これには静殺菌剤は加えていない.
 著者らの検査室でも多数の検体を測定しているが,その中には,空腹時血糖値が200mg/dl以上の高値を示すにもかかわらず,24時間蓄尿尿糖値が著しく低い例を今までに数多く経験した.そこで著者らは24時間蓄尿尿糖値をより正確に測定するためには尿糖検査の試料となる蓄尿試料での尿糖値の低下を抑えることが不可欠と考え,種々の蓄尿試料保存の薬剤について検討した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?