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研究
新しい肝機能検査としての血清中総胆汁酸測定—第1報肝疾患における診断的意義
著者: 遠藤了一1 鹿野敏夫1 清水暉雄1 石塚昭信1 山根示子1 土屋敏子1 太田裕彦2 佐藤源一郎2 上野幸久2
所属機関: 1三宿病院研究検査課 2三宿病院内科
ページ範囲:P.185 - P.188
文献購入ページに移動ヒトの胆汁酸は肝細胞内においてコレステロールより合成され,その胆汁酸プール量は3〜4gであるとされている.飲食により胆嚢から胆汁酸は排出され,小腸上部では胆汁酸濃度が5〜40mMと著しく高くなりミセルを形成し,脂質の吸収を促進している.胆汁酸は小腸下部より再吸収され,アルブミンと結合して門脈を経て肝にもどる.肝細胞はこの胆汁酸を1回の通過でその92%程度を取り込むため,便中への排泄は微量であり,1日500mg程度にすぎない1).
これら胆汁酸の生成と胆汁中への分泌ならびに,腸肝循環により肝にもどってきた胆汁酸の処理という機能は肝細胞のみが営むものである.そのため,肝胆道疾患においては胆汁酸の取り込み,あるいは生成された胆汁酸の分泌,腸管への排出が障害されるため血清中胆汁酸は上昇する.したがって,血清中胆汁酸濃度の上昇は,肝胆道疾患を特異的にしかも鋭敏に反映するという事実がかなり以前より認められていたが,その測定が極めて複雑であり,時間と労力を要することから日常の臨床に応用されるに至らなかった2〜5).しかしながら近年に至り,真重らに2,3)よる3α-ヒドロキシステロイド:NADオキシドリダクターゼ(3α-HSD, EC 1.1.1.50)を用いる酵素螢光法が開発され,血清中胆汁酸の測定が比較的容易で,中央検査室でも実施可能となった.
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