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文献詳細

雑誌文献

臨床検査24巻12号

1980年11月発行

文献概要

今月の主題 薬剤の検査 総説

薬物の代謝

著者: 麻生芳郎1

所属機関: 1千葉大学・生化学

ページ範囲:P.1505 - P.1510

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薬物の吸収
 食物として取られる栄養物質の消化管吸収には二つの経路がある.一つはアミノ酸,糖,ビタミン,ミネラルなど水溶性物質の吸収で,吸収経路は門脈系であり,まず肝を通過してから全身循環に入る.主栄養素の吸収率は非常に良く,吸収速度も速い.他の一つは脂肪の吸収で,中性脂肪(トリグリセリド)を例にとると,消化管内で胆汁酸でミセル化された後,膵リパーゼの作用を受けモノグリセリドと脂肪酸に水解され小腸粘膜細胞内に入る.ここで直ちにトリグリセリドに再合成され,キロミクロン(kilomicron,乳び粒)を形成し細胞腔に出てリンパ系に移行する.キロミクロンはかなり大きな脂肪粒のリポ蛋白であるので,毛細血管壁を通過できないが,内皮間隙の多いリンパ管壁は通過する.小腸リンパ管は乳び槽に集まり,胸管を通って直接大静脈に移る.したがって脂肪は吸収時肝を経由することなく脂肪組織や筋組織に利用されるようになる.主栄養素としての脂肪の吸収は極めて良くまた速やかであるが,食後血中からキロミクロンが完全に消失し,血清が元の澄明になるまでには数時間かかる.コレステロールや脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収もキロミクロンを形成して行われるが,それらの吸収は緩やかで,また吸収率も高くない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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