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今月の主題 微量金属 技術解説
エネルギー分散螢光X線による生体試料中の微量金属の分析
著者: 松本和子1
所属機関: 1東京大学理学部化学科
ページ範囲:P.762 - P.766
文献購入ページに移動 臨床検査の中にNa,K,Mg,Feなど金属分析の項目がある.これに加えて最近ではいわゆる公害病あるいは職業病として,有機水銀,カドミウム,鉛,ヒ素,銅,六価クロム,ニッケルカルボニル,マンガン,タリウム,アンチモン,スズなどの中毒が問題となり,例えば毛髪,血液,尿などの中のメチル水銀,無機水銀の分析,あるいは血液,尿中の鉛やカドミウムの分析などが必要となっている.
これらの金属分析には,原子吸光分析や比色分析が広く用いられているが,これらの方法は試料形態が溶液に限られているため,複雑な前処理に人手と時間を必要としている.最近,半導体検出器とコンピューターによるデータ解析システムを備えたエネルギー分散螢光X線法が,広い分野の分析に用いられているが,本法は試料を非破壊のままで多元素同時に測定できるという特徴を有している.人間の疾病には先ほど述べたように,有害元素が体内に入り起こる場合のほかに,体内での代謝異常などにより金属元素の体内分布が正常時と異なり,直接・間接に疾病を引き起こす場合がある.このようなケースに対しては,生体内の多数の元素分布をパターン的に把握することが診断のうえで重要になろう.エネルギー分散型螢光X線法は多元素同時測定法であるので,今後,臨床医学にとって有用になるものと思われる.本稿ではエネルギー分散螢光X線分析法について解説し,その生体試料への応用を紹介する.
これらの金属分析には,原子吸光分析や比色分析が広く用いられているが,これらの方法は試料形態が溶液に限られているため,複雑な前処理に人手と時間を必要としている.最近,半導体検出器とコンピューターによるデータ解析システムを備えたエネルギー分散螢光X線法が,広い分野の分析に用いられているが,本法は試料を非破壊のままで多元素同時に測定できるという特徴を有している.人間の疾病には先ほど述べたように,有害元素が体内に入り起こる場合のほかに,体内での代謝異常などにより金属元素の体内分布が正常時と異なり,直接・間接に疾病を引き起こす場合がある.このようなケースに対しては,生体内の多数の元素分布をパターン的に把握することが診断のうえで重要になろう.エネルギー分散型螢光X線法は多元素同時測定法であるので,今後,臨床医学にとって有用になるものと思われる.本稿ではエネルギー分散螢光X線分析法について解説し,その生体試料への応用を紹介する.
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