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今月の主題 癌の臨床検査 総説
人癌特異抗原検索の現状
著者: 石井良文1 菊地浩吉1
所属機関: 1札幌医科大学・第1病理
ページ範囲:P.899 - P.905
文献購入ページに移動 人癌腫瘍特異抗原の存在は,腫瘍の自然退縮現象や腫瘍に対する液性・細胞性免疫反応の証明,免疫療法に対する感受性などにより間接的に捕らえられている.しかしながらこのような反応を惹起する腫瘍抗原の性状については十分解明されているとは言えない.動物実験の結果から,腫瘍特異的とみえる抗原の中に腫瘍関連抗原が含まれ,このような正常個体にも出現しうる抗原群を除外したとき,果たして癌化に伴って"新生"した腫瘍特異的なneoantigenが存在するかどうか,重要な問題であろう(表1)1).
動物癌の場合,それが化学発癌にせよウイルス誘発腫瘍にせよ,腫瘍特異的移植抗原(TSTA)が存在し,発癌個体あるいはそれと同系の動物によってTSTAが認識されるとき,腫瘍は拒絶される2).このようにして見いだされたTSTAもその諸性状が解明されているわけではなく,移植免疫学的手技によって間接的に証明されたのみで,人癌の場合ではこのような移植実験が不可能であるため,抗原の検出は結局in vitroの方法に頼らざるを得ない.すなわち癌細胞あるいはその抽出物と患者リンパ球や血清抗体の反応性を測定することにより,腫瘍抗原の存在を知ろうとするわけである.本稿ではこのような研究の概略を紹介し,人癌抗原研究の問題点をできるだけ明らかにするなかで,その性状について述べてみたい.人癌抗原についての研究はむしろ今後の課題として残されていることを特に強調しておきたい.
動物癌の場合,それが化学発癌にせよウイルス誘発腫瘍にせよ,腫瘍特異的移植抗原(TSTA)が存在し,発癌個体あるいはそれと同系の動物によってTSTAが認識されるとき,腫瘍は拒絶される2).このようにして見いだされたTSTAもその諸性状が解明されているわけではなく,移植免疫学的手技によって間接的に証明されたのみで,人癌の場合ではこのような移植実験が不可能であるため,抗原の検出は結局in vitroの方法に頼らざるを得ない.すなわち癌細胞あるいはその抽出物と患者リンパ球や血清抗体の反応性を測定することにより,腫瘍抗原の存在を知ろうとするわけである.本稿ではこのような研究の概略を紹介し,人癌抗原研究の問題点をできるだけ明らかにするなかで,その性状について述べてみたい.人癌抗原についての研究はむしろ今後の課題として残されていることを特に強調しておきたい.
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