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文献詳細

雑誌文献

臨床検査27巻6号

1983年06月発行

文献概要

今月の主題 細菌性食中毒 検査と疾患—その動きと考え方・78

複数菌感染による海外旅行者の下痢症

著者: 青木隆一1

所属機関: 1大阪市立桃山病院

ページ範囲:P.650 - P.658

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旅行者下痢症とは
 開発途上国,特に熱帯,亜熱帯地方に旅行,駐在する人がよく経験する急性下痢症を旅行者下痢症(tourist diarrhea)と呼んでいる.この旅行者下痢症の重要な病因としては,毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)が有名であるが,古典的な細菌性赤痢やコレラのほかに腸炎ビブリオ菌,サルモネラ,Lambl鞭毛虫,NAGビブリオ菌やF—ビブリオ菌(Vibrio fluvialis)などによる感染性下痢が広く知られ,またウイルス性下痢も現地で認められるようになった.他面,これら下痢原性の病原微生物の複合感染による下痢が意外に多く,帰国者下痢でも広く証明されている.複数菌感染による下痢では,成書に記されていない非定型的な症状や所見があるので誤診の一因となりやすく,臨床的に重要視されるに至った.
 わが国では近年,急性下痢症,ことに感染性下痢が乳幼児を除いて減少してきた.特に法定伝染病に指定されている赤痢やコレラなどは激減してもはや"過去の病気"とされていたが,最近,海外旅行者,駐在員が持ち帰る"輸入感染症"としてこれらの感染症が再認識されるようになったト3).表1に大阪市立桃山病院に入院して病原微生物が明らかに証明できた輸入感染症(1974〜1982年)の集計を示したが,細菌性赤痢をはじめ,La-mbl鞭毛虫症まで旅行者下痢症が圧倒的に多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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