今月の主題 レーザーと臨床検査
技術解説
レーザー・Doppler血流計測
著者:
梶谷文彦1
三戸惠一郎1
小笠原康夫1
平松修1
辻岡克彦1
友永轟1
所属機関:
1川崎医科大学医用工学・システム循環器学教室
ページ範囲:P.977 - P.984
文献購入ページに移動
一般に電磁波や音波などの波の振動源と観測点が相対運動を行っているとき,観測される波の周波数は元の振動源のそれとは異なったものとなる.この現象は"Doppler効果"として広く知られているものである.レーザー・Doppler流速計(Laser Doppler Velocimeter;LDV)も,原理的にこのDoppler効果を利用したもので,測定対象にレーザー光を照射し,それから散乱された散乱光のDoppler周波数から対象物の速度を求めるものである.歴史的にみると,光のDoppler効果は,恒星が発する光の赤方偏位などで知られていたが,流速計としての応用は従来の光源からは周波数および位相がそろった光が得られなかったため,アイディアの域を脱することができなかった.
しかし,1960年MaimanやJavanらによってレーザーが開発されたことから,その可能性が開かれた.レーザー光の特徴は,鋭い指向性を持ち,単一周波数であることである.このため光のDoppler信号を得ることが可能となり,1964年Yeh, Cummins1)らによってLDVが初めて開発された.