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文献詳細

雑誌文献

臨床検査28巻10号

1984年10月発行

文献概要

今月の主題 男と女 総説

性の決定と分化

著者: 小林拓郎1

所属機関: 1東京大学付属病院分院産科学婦人科学

ページ範囲:P.1153 - P.1161

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性とは—性分化の目的—
 性,sexという言葉はラテン語のsexusからきており,これはsecare (分ける,割る)に由来するsecusに基づくものとされている.すなわち,男性および女性に分けるということであって,生物学的に定義すれば,『個体の増殖と種属維持を目的とした配偶子(精子と卵子)を産生する個体の違い』ということになる.そもそも生物の基本的な機能である生殖,reproductionには無性生殖と有性生殖とがあり,前者は良好な環境下ではきわめて能率は高いが,個体の素質はすべて同じであり,一たび不適性な環境に相遇すれば,たちまち死滅してしまうこととなり,これに対応するためにはきわめて可能性の低い突然変異に期待する以外に方法はない.これに対し,有性生殖は,増殖という点では能率は悪いが,しかし複数の有利な突然変異を共有するための時間は早く,細胞接着を介して遺伝的な組み換えが行われるため,はるかに大きな遺伝的変異性のある個体がつくられ,環境変化に対する適応性が増大するため生存の機会は多い.しかし,このためには性の分離が必要であって,構造や過程,行動などで二つのタイプの性を必要とする.これが性分化の目的である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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