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文献詳細

雑誌文献

臨床検査28巻11号

1984年11月発行

文献概要

特集 産業医学と臨床検査 Ⅱ.有害因子と臨床検査 2 化学的因子

9 バナジウム

著者: 山村行夫1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.1387 - P.1391

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□はじめに
 地殼中のバナジウム(V)は遊離金属の形としてではなくて,不溶性塩の形,特に三価の状態で亜鉛やニッケルなどと同様に豊富に存在する.バナジウムはカルノー石,ウラニウム・バナジウム鉱,リン酸岩堆積物,チタン磁鉄鉱,粘土ケツ岩などの鉱物資源中に含まれている.バナジウムは,また化石燃料中にも含まれている.
 海水中には微量のバナジウムが含まれている.バナジウムはホヤやナマコなど,ある種の海水中動物ではヘモバナジンとして呼吸触媒の役割を果たしており,これらの動物の呼吸色素にはバナジウムが10%以上含まれている.これらの動物はバナジウムを海水中から取り込んで濃縮する.その動物の死骸は海底に堆積し,やがて石油などの化石燃料が生じたものと考えられる.ベネズエラ産原油の残渣灰の中には,バナジウムは0〜40%含まれている(表).ボイラーで重油を燃焼すると,バナジウムは五酸化物として煙道の壁に沈着する.ベネズエラ産の重油を使用している船舶の煙道から,毎年,20トン以上のバナジウムが回収されるという.この煤は酸性であり,煙道作業員がその煤を吸入すると目,咽頭,気管,気管支,肺などの粘膜刺激症状が生じる1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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