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今月の主題 アルコール 検査と疾患—その動きと考え方・97
アルコール依存症
著者: 重田洋介1 高木敏2 永田茂之2 丸山勝也2
所属機関: 1国立療養所久里浜病院国立アルコール症センター内科研究検査科 2国立療養所久里浜病院国立アルコール症センター内科
ページ範囲:P.49 - P.54
文献購入ページに移動WHOではAlcohol-related problems (アルコール関連障害)という名称を用いることになっており,漸次わが国でもこの方向に改められつつあるが,いわゆる「アルコール依存症」では,特に内科医が扱う場合は,アルコールが原因で種々の臓器障害を伴って診療所を受診してくる.
約5年前の調査ではあるが,日本には15歳以上(法律一hの問題は別として)の飲酒人口は5,600万人あり(男性の85%,女性の54%),そのうち3.5%(約200万人)は日本酒換算で一日5合以上を摂取する大量飲酒者(問題飲酒者)であると言われている.ちなみに毎日なんらかの形で飲酒する(例えば晩酌)いわゆる"アルコール依存"のあるものは,現在約1,500万人いると考えられている.従来「アルコーリズム」はアルコールてんかん,振戦譫(せん)妄,アルコール痴呆などのアルコール精神病と,異常酩酊,それにアルコール依存症を包括するいわゆる"精神科医"のかかわるべき疾患群を意味していた.しかし,今やアルコールに関連した健康問題のうち,精神科固有の領域は一部にすぎなくなってきた.従来から問題にされることが多かった肝障害のみならず,消化性潰瘍,急性・慢性の膵炎,糖尿病,痛風,中枢・末梢の神経疾患,高血圧や心臓などの循環器疾患,大腿骨骨頭壊死や骨粗鬆症,各種の貧血など,ほとんど全身の臓器が問題とされるようになってきた.そして,これらを前述のごとく"アルコール関連疾患"と呼ぶようになり,これらが「病的な飲酒行動(アルコール依存症)」に結び付いて生じてくることを,臨床医は留意すべきである.著者らは精神科医の診断基準とは別に,簡単な"アルコール依存症"の診断基準を持っている.すなわち,
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