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文献詳細

雑誌文献

臨床検査29巻11号

1985年11月発行

文献概要

話題

赤血球の形態と脂質組成

著者: 八幡義人1

所属機関: 1川崎医大・内科

ページ範囲:P.1382 - P.1382

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 赤血球形態の決定因子としては,少なくとも膜蛋白(特にスペクトリン)と膜脂質とが知られている.このうち臨床上問題となる後天性病因としては,肝・胆道疾患に代表される脂質異常症1)であろう.これらの疾患では,血漿脂質異常によって,赤血球膜へ遊離コレステロール(FC)とリン脂質(PL)とが同時に転入され,最も典型的な事例として,trarget cell(標的細胞)が生ずることになる.この赤血球では,増加するFCとPL (特にホスファジルコリン:PC)がともに膜外表面側脂質である点が注目される.このため,膜内表面側に主として分布しているホスファチジルセリン(PS)とホスファチジルエタノラミン(PE)が本質的には不変であり,どうしても膜二重層のうち特に膜外表面側の脂質量が過多となって,膜全体としては,いわゆる"たるみ"を生ずることになって,targetcellを示すことになると考えられている2)
 これに対して,同じ肝疾患でありながら,spur cell anemiaも特異である.この場合には,赤血球膜FCの著増がありながら,膜PL量は正常である点が注目される.赤血球形態は有棘突起を有する奇形赤血球症であって,先端が鈍な棍棒状を呈する.このspur cell生成は,2段階の経過を経て形成されるようである.第一段階は血清リポ蛋白から赤血球がFCを受け取る過程であり,第二段階はこの病的赤血球が脾によって"条件づけ"される過程で,spur cell化はこの段階のときに生ずるらしい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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