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文献詳細

雑誌文献

臨床検査30巻1号

1986年01月発行

文献概要

今月の主題 新生児 検査と疾患—その動きと考え方・107

新生児の感染症

著者: 植田浩司1 安慶田英樹1

所属機関: 1九州大学医学部小児科

ページ範囲:P.47 - P.54

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はじめに
 新生児期に観察される感染症は,感染時期より胎内感染(経胎盤感染),産道感染,後天性感染に分類され,それぞれ特有の病原,感染経路,症状を有している.表1に示すごとく,胎内感染は風疹・サイトメガロ(以下CMVと略す)・単純ヘルペスなどのウイルス,リステリアなどの細菌,トキソプラズマ,梅毒など種々の病原によって生ずる.これら病原体による胎内感染症は,低出生体重児,小頭症,網膜炎,黄疸,血小板減少症による紫班,肝脾腫などしばしば特有で共通する症状を有し,病原検索なしには病原診断を確実には行えないことより,Toxoplasma,Others,Rubella,Cytomegalo,Herpesの頭文字をとり一括してTORCH症候群と呼ばれている.一方,産道感染はB群溶レン菌(以下GBSと略す),CMV,単純ヘルペスウイルス,B型肝炎ウイルス,クラミジアなど多種類の病原体により生ずる.正常分娩の場合でも産道感染は起こりうるが,前期破水などの産科的要因を有する例では,感染が助長され,上行性羊水感染や胎児の肺炎,敗血症に進行する例がみられる.胎内感染,産道感染の場合,児への感染源は母親であり垂直感染と言える.後天性感染の病原も表1に示すごとく多種類に及び,中でも細菌感染症は頻度も高く,新生児医療の進歩に伴い日和見感染,院内感染の様相を呈している.後天性感染の場合,感染源は母親や医療スタッフなど新生児周囲の人や,集中治療に用いるカテーテルやチューブを介した新生児室内の環境に由来するものであり水平感染と言える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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