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文献詳細

雑誌文献

臨床検査30巻5号

1986年05月発行

文献概要

私のくふう

フィルターストリップの簡単で効果的な洗浄技術/携帯用恒温箱

著者: 高橋豊三1 福島淳1 重松貢1 秋本一郎1 奥田研爾1

所属機関: 1横浜市立大学医学部細菌学教室

ページ範囲:P.510 - P.511

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 近年,セルロースアセテート(CA)膜やニトロセルロース(NC)膜を含めて,さまざまなフィルターが医科学分野ならびに分子生物学領域で用いられている.これらのメンブランフィルターを用いた技術は一般に,Coomasieブリリアントブルーやアビジン—ビオチン色素系などのような適当な色素でフィルターを染色し,その後過剰な染色液を洗浄除去し,染色された成分のみを可視化する操作を必要とする.オートラジオグラフィーによる技術でも,NCフィルター上に固定したDNAやRNAに放射活性のあるプローブをハイブリダイゼーションさせた後に,あるいはフィルターに固定化した蛋白質に標識抗体を結合させた後に,必ずよくフィルターを洗浄して,未結合の非特異的標識物を取り除かなければならない.この洗浄操作は,一般にはフィルターを傷つけないように適当な溶媒の中にフィルターを浸漬し,ゆすぐことによってなされている.しかし,このような方法では長時間を要し,不完全な結果を招くことが多い.
 われわれは簡単で,しかも経済的な洗浄技術を開発した.この技術は非常に融通性があり,どの実験室でも必要に応じて容易に修飾することができる.器具の組み合わせに関しては,典型的に多目的用途のものを利用した.つまり,図1に示すように,1〜2lのビーカー,マグネチックスターラー,それにフィルターを支持するための単純な円筒状の容器などである.この容器は図2に示したように,ディスポーザブルの注射筒をナイフで切り,ドリルで約8mmの穴をたくさん開けた.カラムの底はガーゼで覆い,輪ゴムでとめた.容器作製には主として50ml容のポリプロプレン製の注射筒を用いた.注射筒のフランジの部分は,溶液の入ったビーカー内にこの容器を投入したときにフロートの役割を果たし,さらにスターラーで撹拌したときにプロペラとして作用してより大きな渦を溶液表面に巻き起こし,容器内への洗浄液の流通を増大させる.ストリップのサイズが大きい場合は,ほかにも安価で扱いやすい容器を利用することができる.例えば,100〜200 ml容のポリエチレン製のビーカーを同様に加工し,首の所に発泡スチロールの板を切り抜いて取り付ければ,容器に適当な浮力をもたせることができる.プランジャー部分も図2に示したようにナイフで切り,それぞれのストリップが互いに接触しないように仕切りとして使用した.フィルターサンプルを容易に区別できるように,この仕切りには番号を付けた.たくさんのフィルターストリップを同時に洗う必要がある場合は,2〜5ml容の注射筒を利用して容器を作製することを推奨する.この場合,おのおのの容器のフランジに番号を付けると,使用中に個々のフィルターサンプルをすぐに見分けることができ,作業しやすい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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