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文献詳細

雑誌文献

臨床検査30巻6号

1986年06月発行

文献概要

医学の中の偉人たち・6

Edward Jenner 天然痘の予防

著者: 飯野晃啓1

所属機関: 1鳥取大学医学部解剖学第1

ページ範囲:P.664 - P.664

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 1980年5月「天然痘終息宣言」がWHO総会で決議された.遅くまでアフリカの諸国に残っていた天然痘が,強力な種痘の実施によりこの地球上からまったくなくなったことをWHOは高らかに宣言したのである.Jennerが1796年,8歳の男児,Jams Hippsに牛痘の膿を接種し,これが成功してから,この世に天然痘のなくなるまで約180年の年月が流れた.
 天然痘にかかって回復した人は生涯二度と発病することがないという事実は,そうとう以前からわかっていた.特に中国やインドでは人痘接種が,天然痘予防法として古くから知られていた.天然痘の人が着ていた衣類をわざわざ着せ感染させる方法,痘の膿を綿や布に浸して鼻孔に入れる方法などいくつかの方法があった.この人痘種痘法はヒトの天然痘そのものを感染させるので,真性の天然痘を発病させる危険性が高く,被接種者に梅毒など他の伝染病を感染させることがあるなど重大な欠点があることは免れなかった.また,牛痘が天然痘を予防することを知っていた者も,Jenner以前に何人かいた.しかし,それを研究として推し進め,広く人類を救おうとする努力まではしなかった.初めて牛痘接種の意義を明かにし,広く一般に広めたのはJennerの功績である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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