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文献詳細

雑誌文献

臨床検査31巻11号

1987年10月発行

文献概要

こぼれ話

先入観と習慣

著者: 中根一穂1

所属機関: 1東海大学医学部・細胞生物学

ページ範囲:P.1215 - P.1215

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 ここ数年,なんとかして光顕資料を電顕で観察できるようにしようと努力している.その結果,組織切片をガラススライドに貼り付け,これを走査型電子顕微鏡による反射電子を利用して観察する方法を開発した.
 研究の初期に,電顕用にエポンやメタクリレートなどの樹脂に包埋された組織を2〜3ミクロンの切片にし,それをガラススライドに貼り付け重金属で染色して,切片の表面を電子ビームで走査することにした.この手法に教室員は反対しなかったが,パラフィン切片の観察には全員が反対した.パラフィンに電子ビームを直接照射すれば,パラフィンが蒸発して走査型電子顕微鏡を台なしにしてしまうと考えたからである.そこで脱パラフィンすることにしたが,脱パラフィンして乾燥させると,組織にひびが入ったり縮んだりしてばらばらになり役にたたなかったので,ある週末ひそかに脱パラフィンしないでそのまま電子ビームを照射してみた.その後,分解能等を検査しても異常がなかったので,パラフィンが電子ビームで蒸発するというのは教室員の先入観であると言い,皆の前で威張ってパラフィン切片に電子ビームを照射してみせたのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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