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文献詳細

雑誌文献

臨床検査31巻2号

1987年02月発行

文献概要

注目される腫瘍マーカー・1

血液型物質に関連した糖鎖抗原

著者: 菅野康吉1 大倉久直2

所属機関: 1慶応義塾大学医学部外科学教室 2国立がんセンター病院臨床検査部がん反応検査室

ページ範囲:P.194 - P.199

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はじめに
 モノクローナル抗体技術の進歩によって特定の分子構造を抗原決定基として認識する抗体が得られるようになり,それらを用いた研究により細胞の癌化にともなって細胞膜の重要な構成成分である糖蛋白あるいは糖脂質の糖鎖部分の変化が出現することが明らかとなっている.このようなモノクローナル抗体によって認識される糖鎖抗原を調べてゆくと,興味深いことに従来もっとも良く知られていた糖鎖である血液型物質と密接な類似性を有することが判明した.すなわち,血液型物質のあるものは正常細胞に比して癌細胞で著しく増加していること,あるいは癌細胞に比較的特異的と考えられた糖鎖抗原が実は既知の血液型物質の構造に別の糖が付加したり,または一部の糖が欠損した構造であったことなどである.モノクローナル抗体を利用して癌組織あるいは癌患者血清中に出現するこれらの糖鎖の変化を調べることによって,新しい癌の診断技術が開発されつつある.本稿では血液型物質の構造,合成系について簡単に述べ,さらに新しい腫瘍マーカーとして最近注目されている血液型物質類似の癌関連糖鎖抗原について主だったものを取り上げて解説する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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