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文献詳細

雑誌文献

臨床検査32巻11号

1988年10月発行

文献概要

わだい

耐熱性酵素

著者: 冨田耕右1

所属機関: 1ユニチカ(株)中央研究所生化学研究部

ページ範囲:P.1218 - P.1219

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 酵素は高分子量の蛋白質であり,構成アミノ酸残基の各種の結合や相互作用により各酵素に固有の高次構造をとることができる.このことが酵素の精巧な触媒機能の発現を可能にしているが,この高次構造を支える力はあまり強くないので,温度上昇などのちょっとした環境の変化により高次構造は崩れ,酵素活性は失われる(「失活」と呼ぶ).すなわち,酵素は一般に安定性が悪く,熱的な表現では耐熱性が悪いということになっている.それでは,耐熱性に優れた酵素は存在しないのかというと,そうでもないことがわかってきている.それが「耐熱性酵素」と呼ばれるものである.
 さて,自然界は広く深く,常識を超えるような極端な環境条件で生息する生物が存在する.これらは下等生物に限られるが,例えば,高温環境を好んで生息する微生物が知られており,「好熱菌」と呼ばれている.一般には,55℃以上の環境で生育する微生物を好熱菌と定義しており,さらに,55〜75℃の環境で生育するものを「中等度好熱菌」,75℃以上の環境で生育するものを「高度好熱菌」と分類している.これらは高温環境のほうを好むわけであり,好熱菌と呼ばれるゆえんである.高度好熱菌として代表的なものにThermus属,中等度好熱菌として代表的なものにBacillusstearothermophilusなどがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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