icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査32巻11号

1988年10月発行

文献概要

わだい

無カタラーゼ血症

著者: 緒方正名1

所属機関: 1岡山大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.1247 - P.1247

文献購入ページに移動
 無カタラーゼ血症(acatalasemia)は,1947年に高原によって初めて発見された常染色体劣性形質の体質異常である.その血液中にはカタラーゼ(2H2O2→O2+2H2Oを触媒する酵素)が正常人のそれの0.1%しか含まれず(緒方・高原,1966)1),半数の者には進行性顎骨壊疽を有する.その成因は,無カタラーゼ血症の組織が肺炎双球菌,β—連鎖状球菌などから産出される過酸化水素によって,破壊されやすいことにあると考えられている.現在まで無力タラーゼ血症は,日本人46家系・90名,在日韓国人1家系・3名,スイス人3家系・11名,ペルー入1家系・2名が報告されている.
 正常人と無カタラーゼ血症との間に生まれた子供は低カタラーゼ血症(hypocatalasemia)と名づけられている.本症は相同染色体のカタラーゼ遺伝子座の一方に正常人の遺伝子を,他方に無カタラーゼ血症のそれを有する異型接合体で,無カタラーゼ血症のキャリアである.低カタラーゼ血症の血中カタラーゼ活性は正常人のそれの約50%を示す.また正常人の血液カタラーゼ活性の分布と低カタラーゼ血症のそれとはほとんど交叉せず,血液カタラーゼの測定値から本症は容易に判別できる(図).低カタラーゼ血症は日本人の500人に約1人の割合で存在している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?