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文献詳細

雑誌文献

臨床検査32巻11号

1988年10月発行

文献概要

特集 アイソザイム検査 II.各論

9 アルギナーゼ

著者: 池本正生1 戸谷誠之2

所属機関: 1京都大学医療技術短期大学部衛生技術学科 2京都大学医学部臨床検査医学教室

ページ範囲:P.1280 - P.1286

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はじめに
 アルギナーゼは尿素サイクルを構成する酵素の一つで,反応系の最終段階を担っており,基質L-アルギニンを加水分解しL-オルニチンと尿素を生成する反応を触媒する酵素である.本酵素は,肝臓,腎臓,赤血球,乳腺,皮膚,睾丸などの組織に,植物の豆類には,カナバリン分解酵素として,またNeuropora crassaおよびAspergillus nigerなど酵母細菌などにも広く分布していることがよく知られており,一部のアルギナーゼは精製されている.本酵素の細胞内局在は,ミクロゾーム,ミトコンドリア,核などである.分子量は種によって異なるが,哺乳動物では12万〜15万1)で,四量体を形成していると考えられている.中でもラット肝臓のアルギナーゼ2)は四量体を形成していると報告されており,また酵母由来のアルギナーゼは三量体から構成されていることが,Duong3)らによって確認されている.しかし,中には分子量が28万程度のものも存在する.
 アルギナーゼの至適pHは10.0〜10.5付近にあり,酸性側(pH6.0以下)ではほとんど活性を示さないのに対し,アリカリ側の広範囲で活性を示す.比活性は動物肝臓中の酵素がもっとも高く,活性保持のためにMn2+またはCo2+が必要不可欠である.また,これらの二価金属イオンの共存は耐熱性にも効果を示し,さらに1分子の酵素蛋白質に4原子のMn2+が結合していることが,この酵素の核磁気共鳴測定4)で明らかになっている.等電点(pI)は,ウサギ肝で7.25),ラット肝で9.32),ウシ肝で5.96),ブタ肝で6.07),ヒト肝で10.08),ヒト赤血球中で9.0〜10.0と動物によって異なっている.また,この酵素は解離会合性の強い性質を持っていることも明らかになっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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