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文献詳細

雑誌文献

臨床検査32巻8号

1988年08月発行

文献概要

今月の主題 尿中低分子蛋白の測定と意義 巻頭言

尿中低分子蛋白の臨床検査

著者: 河合忠1

所属機関: 1自治医科大学臨床病理学教室

ページ範囲:P.829 - P.829

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 分子量が約6万ダルトン以下のいわゆる"低分子蛋白"は,糸球体基底膜を比較的容易に通過して血漿から糸球体濾液に移行するので,血中濃度は一般に低い.したがって,これらの低分子蛋白は血中から分離精製されることは少なく,多量の蓄尿を濃縮して分離精製されることが多い.したがって,免疫化学的に測定しようとする時は,SRID法では一般に検出感度が十分ではなく,ネフェロメトリーやRIA,EIAなどのより鋭敏な測定法によって定量される.もちろん,免疫電気泳動法でも明確な沈降線を作り難い.
 血中に由来する低分子蛋白は近位尿細管において糸球体濾液中の約95%余りが再吸収され,そして異化されるため,実際に尿中に排泄される蛋白量はきわめて少ない.したがって,正常尿でこれら低分子蛋白を測定するには,セルロースアセテート膜電気泳動法や免疫電気泳動法ではむつかしい.一般に,ディスク電気泳動法やポリアクリルアミドゲル電気泳動法では低分子蛋白帯が明瞭に認められる.以前は,これらの電気泳動法による分画像から尿蛋白の組成の変化を推定していた.しかし,より定量的に低分子蛋白の尿排泄量を知るためにネフェロメトリー,EIA,RIAなどの微量測定法によって個々の成分を定量するようになったのである.ただ,尿は通常,血漿よりpHが低く,常在菌などにより汚染されているためにさまざまな蛋白分解酵素を含み,尿検体を保存している間に分解しやすい蛋白成分で問題がある.例えば,β2-ミクログロブリンはその代表的なものである.このように,尿中低分子蛋白の検査に当たっては測定法の選択と尿検体保存に留意する必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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