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アクロシンと不妊
著者: 松本修1
所属機関: 1神戸大学泌尿器科
ページ範囲:P.1102 - P.1103
文献購入ページに移動 アクロシンは,主に精子先体内膜に存在するトリプシン様蛋白分解酵素である.卵透明帯の通過など受精過程に関与し,アクロシン活性がきわめて低い球形精子症では,たとえ精子濃度,精子運動性が正常でも妊娠は成立しない1).受精の際には,精子の受精能獲得がなされ,その最終段階として先体反応がおこるが,これはまずヒアルロニダーゼが先体膜の胞状化とともに放出され,卵丘の基質を分解し,ついで先体消失がおこってアクロシンが露出し,卵丘の内側の透明帯を融解し,精子の通過を容易にする.アクロシンは,射出精子では90%が不活性なプロアクロシンとして存在し,10%の活性型アクロシンも大部分がインヒビターと複合体を形成した不活性な状態で存在する.インヒビターは精巣上体に由来し,アクロシンの自然発生的活性化を防止し,受精能獲得過程での生理的な活性化をコントロールしていると考えられる.アクロシンの標準的な測定法は,Goodpastureら2)による以下の方法である.精漿にはインヒビターが存在するので,密度勾配遠沈法で精漿を完全に除去した後,10%グリセロール精子浮遊液に塩酸を加え,pH2.8で12時間以上の酵素抽出をする.精子を除去した抽出液をpH3.0の1mmol/l塩酸で透析し検体Aとする.
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