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文献詳細

雑誌文献

臨床検査35巻6号

1991年06月発行

文献概要

TOPICS

ヒト造血幹細胞の分化

著者: 中村幸夫1 中内啓光1

所属機関: 1理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター

ページ範囲:P.655 - P.657

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 造血幹細胞の分化・増殖には間質細胞やサイトカインなどの複雑な相互作用が関与していると考えられており,その機構の解析にあたっては造血幹細胞を濃縮して取り出すことが有用である.ヒトの血液細胞に対しては多くのモノクローナル抗体が作製されいるが,中でもCD34抗原はヒトの造血幹細胞に特異的に発現していることが知られており1),幹細胞純化にとってきわめて有用である.そこでわれわれはCD34に対するモノクローナル抗体とFACS (fluorescein activated cellsorter)を用いて骨髄血ならびに末梢血から血液幹細胞を濃縮し,その機能を調べる実験系を確立することを試みた.
 CD34は分子量約110kDaの糖蛋白で,骨髄細胞の一部と毛細血管内皮細胞の一部に発現しているが,末梢血細胞には発現していないとされていた.CD34に対する抗体を用いてヒトの正常骨髄血ならびに末梢血細胞におけるCD34抗原の発現をFACSで解析した.その結果CD34を強く発現している細胞は骨髄単核球分画の0.40±0.23%であり,また同様な明るさを持つCD34陽性細胞は末梢血中にも0.011±0,002%存在することがわかった(図1).FACSを用いたさらに詳しい解析から,骨髄中のCD34陽性細胞の大部分がHLA-DR抗原陽性であること,また一部のCD34陽性細胞は,CD13,CD33といった骨髄単核球系に分化した細胞に発現している抗原を同時に持っていることが明らかになった2).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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