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血中フコシルトランスフェラーゼの測定法
著者:
天野直子1
日比望1
塚田裕1
所属機関:
1(株)エスアールエル研究部
ページ範囲:P.990 - P.992
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細胞の癌化に伴って,複合糖質(糖蛋白あるいは糖脂質)の糖鎖に構造変化が起こることはよく知られているところである1).糖鎖の癌性変化は一見多様であるが,シアル酸やフコースの付加などといった共通のパターンも観察されており,糖鎖の構造解析とともに,それらを引き起こす酵素自体にも徐々に研究の目が向けられてきている2).フコシルトランスフェラーゼ(FT)は糖ヌクレオチド:GDP―フコースから複合糖質ヘフコースを転移する酵素であり,血液型物質の生合成に関与するほか,シアリルトランスフェラーゼなどとともに,糖鎖の癌性変化を引き起こすkey enzymeの1つと考えられている.FTは受容体へのフコシル基転移の様式から,ヒト血液型物質であるH抗原(Fuc α1→2Gal β1→4Gl cNAc)の合成に関与するα1→2 FT,II型糖鎖(Gal β1→4GI cNAc)に作用するα1→3 FT,I型糖鎖(Ga1β1→3 Gl cNAc)に作用するα1→4FT,Asn型糖鎖の還元末端に作用するα1→6FTに大きく分類され,血中にはすべてのFTが存在すると考えたほうがよい.