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文献詳細

雑誌文献

臨床検査35巻9号

1991年09月発行

文献概要

TOPICS

ヒト尿中補体阻害因子

著者: 富田基郎1

所属機関: 1昭和大学薬学部

ページ範囲:P.992 - P.993

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 ヒト尿には血液中濃度とは大きく異なる含量比で多種類の蛋白が含まれており,それらの定量は臨床検査に有用と思われるが,まだ一部しか解析は進んでいない.本題の尿蛋白も見いだされて間もないため臨床病態とどのような関連があるのか不明である.しかし将来はなんらかの指標に利用されることを期待して現状を紹介する.
 2種類の補体系阻害因子,すなわちDAFとMACIFが尿中に見いだされている.ともにグリコシルホスファチジルイノシトール結合型(GPI)膜蛋白の水溶性型である.GPI膜蛋白とは図1に示す一般構造を持つ細胞表面膜蛋白である。その詳細は総説を参照されたい1).DAFはCD55抗原とも呼ばれ,補体系のC3・C5コンベルターゼの崩壊を促進することにより補体活性を阻害する2).その構造はSCRドメインというアミノ酸約60残基から成るユニット構造が4つ連結し,そのC末端にGPI部を持つ.SCRドメインでコンベルターゼ中のC3と結合して,BbやC2aを追い出す.一方,MACIFはCD59抗原とも呼ばれ,補体膜攻撃複合体を形成する最終段階のC9結合を阻害する.分子量18kdの77アミノ酸とGPI部から成る小さな蛋白である1).両者とも膜型蛋白はGPI部で細胞膜に強く疎水結合しており,膜型としては血漿中や尿中には存在しない.GPI部の脂肪酸部分を失ったものが膜から血漿中や尿中に遊離すると考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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