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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻12号

1992年11月発行

文献概要

今月の主題 免疫不全症 話題

チトロクロームb558―殺菌剤を生成するヘム酵素

著者: 磯貝泰弘1 飯塚哲太郎1

所属機関: 1理化学研究所生体物理化学研究室

ページ範囲:P.1228 - P.1229

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 高等動物の体内に侵入しようとしている微生物が,その動物の生体防御システムから最初に受ける攻撃は,好中球やマクロファージなどの食細胞によるものである.食細胞が異物を認識して食胞に取り込む際,食胞内には過酸化水素(H2O2),次亜塩素酸(HOCI)ヒドロキシルラジカル(OH・)などの強い殺菌力を持つ種々の活性酸素が生成して,侵入者を破壊する1).これらの活性酸素は,食細胞の細胞膜上に存在するNADPHオキシダーゼと呼ばれる酵素系によって生成されるスーパーオキシドアニオン(分子状酸素が一電子還元されたもの,O2-)が化学変化してできたものである(図1).
 好中球をはじめとする顆粒球には,他の組織にはみられないb型のチトクロ(ー)ム(cytochrome)が存在していることが昔から知られていた.このチトクロームは,還元型で558nmに吸収極大を持つことからチトクロームb558(cyt b558)と命名された.チトロクロームb558は,最初の報告2)以降しばらくの間,機能不明のまま放置されていたが,免疫不全症の1つである慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease;CGD)の患者のなかには,その好中球にチトロクロームb558が欠損しているものがあることが発見3)されてから,NADPHオキシダーゼ系と関連させて詳しく研究されるようになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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